久方ぶりに訪れた青森は深い雪が一面に広がっていて、私が初めて青森に訪れた時のことを思い起こさせた。
例年なら新幹線の改札前で、満面の笑みでお父さんが迎えてくれていたけど、今回は三沢空港での再会だった。2年ぶりで、少し照れ臭そうに理子は挨拶をし、玲はママの後ろに隠れていた。
車に乗り込み、青森でも数年振りという豪雪の中を行く。見渡す限りの銀世界。なにもかもを覆い尽くしていて、見えるものは森の濃い緑ばかり。それ以外なにも見えない景色なのに不思議と心が躍った。
途中、食事をとることにした。回っているけどレーンには寿司はなく、全て注文制の回転寿司だった。お腹いっぱいごちそうになった。
家に着いてお母さんと再会した。元気そうで何よりである。理子は庭に積もった雪に大興奮し、早く遊びたいと嬉しそうだった。
予め送っておいた雪遊び用の一式を着込む理子に対して、手袋はおろか上着すら着ないとごねる玲。軒下には屋根から雪が落ちてできたであろう天然の傾斜ができており、そこでそり遊びに興じた。うまく滑れなくてずっこけてしまうのすら面白い。寒いことも面白いといった感じで理子は楽しそうだった。でも一番楽しんでいたのは花さんだったに違いない。理子に混じってそりを楽しんでいた。
しばらく遊んでから室内に入ると、お父さんは豊盃酒という、木箱に入っていかにも高級そうな日本酒を出してくれた。すっかりタバコをやめたというお父さんと久方ぶりに乾杯した。
続いて出てくる毛蟹。貪り食うとはこういうことか、とその言葉を体現するように食べる食べる食べる。青森という場所で食べると尚美味しいといった味。東京の家で食べてもこのような食べ方にはならないと思う。
ハーフボトル?の酒は比較的早い速度でなくなって、贅沢ないつもの田酒をいただく。これは誰かからの頂き物とのことで、地方暮らしというのはこういったことなんだよなと羨ましく思う。
夕飯は花さんがすき焼きを用意してくれたものをいただいた。肉は、イオンなどのスーパーではなく、地元民が足を運ぶ肉専門店へと行って買ったものだった。
録画してあった紅白歌合戦の「残酷な天使のテーゼ」をなぜか繰り返し見る理子。しまいには口ずさんで歌っていて面白かった。
私は早々に風呂に入ることを諦め、ただただ酒をくらって土曜日が終わった。
夜中、ザッザッザッと雪を踏むような音がして薄気味悪かったのだけど、翌日花さんに聞いたら屋根から雪が落ちた音じゃないかとのことだった。
日曜日。午前中は引き続き雪遊びをすることにしたが、雨が雪に変わり、また晴れたりして安定しない天気だった。
それでもお構いなしで、理子はかまくらを作ることに挑戦していた。私は裏庭のほうにまわって、探検することにした。
雪が何十センチと積もっていて、どこに側溝があるのかもわからないような状態で、恐る恐る歩みを進める。
いつ見ても、ここからの景色は広大すぎる。雪があると奥行きが不確かになって、どこまでもこの世界が続いているような気すら起きてくる。
ふと足元をみると細かな歩幅で小さな足跡があった。鳥が歩いたようないかにも3つ股のものではなく、獣といった風のそれに少し背筋が凍ってしまった。そそくさと家の方に戻る。
玄関脇に積もったところを掘って、理子はいい感じのくぼみを作っていた。もう少しでかまくらと呼べるものができそうだった。
しばらくすると、雪遊びを一区切りさせて、またお出かけすることになった。地元民が集結するイオンモールである。
そこのフードコートで食事をする。理子はここへきてまでもマクドナルドを食べ、私は初めてペッパーランチというヤンチャな食べ物をチョイスした。
お父さんは早々に食べ終わって、ひとり時間を満喫しているようだった。私たちは食べ終わると子供たちのご機嫌とりタイムとなり、ゲームセンターへと向かった。理子は30分500円のアスレチック。玲はアンパンマンやトーマスの乗り物に興じている。
お父さんとの待ち合わせの時間までがっつりと遊んだ。
店内では、通り過ぎる人のなかで成人式帰りであろう集団がいた。なんでここにいるんだろうね?と花さんにふってみると、他にいくところがないからだろうとのことだった。
イオンを出ると、白鳥の飛来地へと向かった。以前もここに来たことがあったのだけど、玲は当然初見である。白鳥とともにかもめもたくさん群れていた。近くの小屋でえさが100円で売っていたのでそれを買い、餌やりをすることにした。
玲はかたくなに拒否したけれど、理子は率先して楽しんでいた。意外にもお父さんも参加していた。餌を放ると、かもめの方が小回りが効くようでうまく餌にありついていた。白鳥は長すぎる首をうまく使えずクネクネして食べれないようだった。
水辺ということもありかなり冷えるのだけど、玲はやっぱり上着を着てくれない。氷のように冷たくなった手を握って少しでも温めることにつとめた。
ふと遠くを見ると、ここにも成人式帰りのカップルがいた。イオンよりは少しロマンチックだけど、きっと足の消毒はしていかないだろう。
飛来地を後にし、温泉へと向かった。そこはいつもお正月に行くところで、りんご風呂に入ることができる。
お父さんとシャンプーをシェアさせてもらい、入る。こんな時期ではあるけど結構混んでいる。室内に露天、電気にジェットと一通り楽しんでいると待ち合わせの時間となった。前よりも長く入っていることが苦にならなくなったような気がする。
風呂から出ると当然のようにコーヒー牛乳を飲む。うまい。すごくうまい。理子と玲の面倒を見ながら入らなくてはならない花さんは疲れがあまり取れていない様子で出てきた。来年はもっと楽になるだろうか。
外に出ると雪がまた強く降っていいた。
家に着くと昨日の続きの田酒をいただく。そして毛蟹、ほたて、いくらと海産物のオンパレード。お父さんと酒を飲み交わす。
もうお風呂に入ってあるから、だいぶぐいぐいと飲むことができた。
最終的には花さんも飲んで、一升瓶を空けていた。理子と玲は、廊下でお母さんとボーリングをして楽しんでいた。ずっと花さんに隠れていた玲だったのだけど、これを境に仲良くなっていた。仲良くなった頃に帰らなくてはならないのだけれど。
一番奥の部屋に立派なピアノがあって、理子がそれで「喜びの歌」を弾いていた。お父さんは「ベートーベンだね」と嬉しそうにピアノを聴いていた。
部屋の奥の方から聴こえる誰かが弾くピアノ。それを聴きながらゆったりとした時間を過ごすというのは一つの幸せの形と言っていいと思う。
月曜日、祝日。
目を覚まし、ご当地パンのイギリストーストを食べる。それからまた雪遊びをする。青空が広がるいい天気だった。
理子は昨日の続きで、かまくらづくりに勤しんでいる。昨夜に雪がまた屋根から落ちてきて、大量の雪がある。材料はばっちりである。
しばらく掘り続けると理子がすっぽり収まるくらいの大きさの穴があいた。理子はすっかりご満悦の様子だ。
『青森に行ったら、雪合戦して、そり遊びして、かまくら作るんだ』と理子は言っていたのだけど、全てを叶えることができた。
花さんは、ふわふわの雪にダイブして、雪を青森を満喫し、玲は上着も着ないで早く家に入りたそうにしている。それぞれである。
お昼ご飯を食べるとあっという間の滞在が終わる。せっかく慣れてきた玲ではあるのだけど、次来るときはもっと愉しめるだろうと思う。
お母さんとお別れをし、お父さんに三沢空港まで送ってもらう。空港の脇にある航空公園で雪に埋れた遊具で遊んでから帰った。
次会うときはマスクなしで会いたいものである。
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