クリーニング屋のドアを開けると、カウンターには
誰もいなかった
ただカウンターの向こうの大きな洗濯機が大きな音を立てて回っていた
すいませーん
と何度声をかけても返事はない
くるくると回る洗濯機の音にかき消されてしまう
どうしたものか
目の前の棚には僕の名前が書かれた伝票のついたシャツが見える
よっぽど伝票をカウンターに置いて持っていこうかと思ったけど
タイミング悪くなったら強盗に見られるだろうと思いやめた
ふと足下を見ると、亀がいた
微動だにしない亀
ただのオブジェかと思っていたら
いきなり首が動き出した
生きてる!
亀の放し飼いかよ
しかも下手すりゃ踏まれる位置で
僕は必要以上に戸惑い
一度店の外に逃げ出した
そして、裏に回れないかと思い見回したが
塀に囲まれているので、正面からしか入れない
もう一度ドアを開けて入り、声をかける
すいませーん
この言葉を叫び始めてもう5分は経過した
なす術も無く立ち尽くしていると
普通におばさんが、すーっと現れて
僕の伝票を受け取って棚から僕のシャツを見つけ出し
渡してくれた
僕はありがとうございます
と言って外に出た
心なしか亀も頭を下げたように見えた
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