2009年10月5日月曜日

2009100×

友人の引っ越しの手伝いをするためにhanaと湯島へ行った。
総武線で御茶ノ水まで行き、教えられた住所をiphoneのグーグルマップへ打ちこむ。
現在地と目的地が線で引かれ、その道筋に沿って僕たちは歩いた。

おそらく昔は違う名前で呼ばれていたであろう狭い道を歩いていくと、
数分後目的地へとたどり着いた。
まだそこには友人は到着しておらず、
まだ高い位置にある太陽の光をしばらく体に浴びていた。

唐突にクラクションが鳴る。
そちらに振り向くと、キャラバンの助手席で煙草を吸っている友人の姿を認めた。
運転手は、この友人の引っ越しを3回も手伝っている男であった。
僕たちは挨拶もそこそこに、エレベータなしの5階の部屋までの階段を
何度も往復する事になった。
難儀だったのは、彼が絵描きであることにあった。
洗濯機やテレビ等と言った家電製品がない代わりに
画集や、写真集などの重量のあるものが多くあった。
それに加えて、サイズの大きい真っ白なキャンバスもあって
狭い踊り場で何度も切り返しては階段を上ることとなった。
時折、汗が額を濡らし、グレーのTシャツの首元には黒い染みを作っていた。

何度目かの往復を終えると、キャラバンに積まれていた荷物は奇麗に片付き、
全てのものが無事に新しい部屋に運ばれた。
細かな片付けは友人にまかせ、僕は開かれた段ボールの上にあったカズオイシグロの
「夜想曲集」をベランダに足を投げ出しながら読んだ。

日は傾き始めていた。
開かれた窓からは少し冷たい風が入るようになっていた。
友人が新宿に買い出しに行くというのでhanaとついて行った。
助手席にはもちろん煙草を吸う友人が座った。
新宿で一通りの買い物を済ませると、荷物を家まで運び
キャラバンをレンタカーショップに返却した。
そして居酒屋で夕食を取った。

友人二人が途中で合流し、6人での食事となった。
注文した酒はあっという間にそれぞれの胃の中に納められていった。
それとともに会話の内容はエスカレートしていって
テーブルの下でhanaの手を握っては、大丈夫だよと言うのであった。

酒に、会話に酔ったhanaを自宅まで送る。
タクシーの運転手にはきびきびとした声で行き先を告げていた。
それでもまっすぐに前を見つめるその視線は揺れていて
僕はその目が閉じるまでそばにいようと思った。

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