2018年7月23日月曜日

日曜日

日曜日の朝は静かだった。理子がいないのである。布団に対して自分の体を大きく広げて寝られる幸せを噛み締める。
夜のうちにタイマーをかけておいた洗濯機はまだ稼働していなかった。朝の5時である。僕は一度スイッチを切り、予約を解除してからまた洗濯機のスイッチを押した。
洗濯が終わるまで、プリキュアではなく、朝の情報番組を見る。2、3年前はこんな感じだったなと思いながら、お気に入りのアイスコーヒーを飲む。
洗濯を終えるブザーが鳴ると、ベランダで洗濯物を干した。いつもより洗濯物が少ない。理子の分がないのだ。


花さんとれいちゃんが起きてくる。れいちゃんは朝のおっぱいを飲んだら眠りにつく。そしてうんちをして、また眠りにつく。腹圧が強いのか、れいちゃんのおならは立派だ。


お昼。
ソーメンを茹で終わったあとに、めんつゆがないことに気がついた。仕方がないのでごましゃぶのたれを使って昼食とした。

お昼を食べて少ししてから、沼津に帰っていたおかんと理子を迎えに品川へ行くことにする。リビングの扉を開けるとそこはもう熱帯雨林気候。自分の体に不快という名の湿気がまとわりつく。花さんはもうここでよいと言って制して、リビングのドアを閉め、家を出た。

こころなしか外を歩いている人は少ないようだ。電車に乗っても然りだった。
大井町線に乗って品川へ。コンビニで買ったお茶はもうぬるくなっていた。

品川駅に着くと、ここは人でごった返していた。なにもこんな時季に日本に来なくても、と外国人旅行者を見て思う。しかし日本から四季はなくなってしまったようなものだからいつ来ても同じようなものなのかもしれない。寒いときはクソ寒く、暑いときはクソ暑い。


新幹線の改札で待ち合わせしようかと思ったのだけど、到着まで少し時間があったので、せっかくだからホームまで行くことにした。見送り用の切符を買い、東京駅方面のホームへ。品川から東京は一駅だから、ホームで待っている人はいなかった。
ベンチに座って到着を待った。

しばらくすると、アナウンスとともに新幹線がホームへと滑り込んできた。ぞろぞろと降りてくる乗客のなかに、母と理子の姿を探した。

新幹線がまた走り出した時、左手に二人の姿を見つけた。僕がそちらのほうへと歩いて行くと、理子も僕に気がついたようだった。「パパー!」と言って全力で走ってくる。
僕も近づいていき、膝をつき、力一杯抱きしめた。
「おかえり!楽しかったか?」と聞くと理子は笑顔でそれに答えてくれた。
母には「甘やかして困るわ」と言われても抱っこして歩いた。普段とは違うシャンプーの香りに、理子が自分とは離れたところにいたんだなと感じた。
親と離れて過ごすのはまったくの初めてのことだったのだ。

来た道を逆に行き、家まで帰った。


家に着くと数日ぶりに会うママに甘える理子。
れいちゃんにも理子なりに優しく接し、変わりなくいたのだけど、夜になると一変する。とにかく寝ないのである。絵本を2冊読んで、これでおしまいねと言っても自分で電気をつけたり消したりする。
いきなり立ち上がってみたり、足をバタバタしたりして、一つの部屋で寝ているれいちゃんの身の危険を感じてしまう。
こういったとき、思わず、弱者のれいちゃんを優先してしまい、理子を叱ってしまうのだけど、それに比例してヒートアップしてしまう。
ようやく寝たかと思えば2時頃に唐突に叫び出す。
「ヤダヤダヤダー」とのたうちまわる。手足をバタバタさせて全身で不満を訴えている。
目は閉じているのだけどとにかくヤダヤダという。
当然僕も花さんも起きて、二人がかりでなだめるのだけど、本人もどういったわけでそう暴れているのか、理解しているとも思えない。
10分以上そんなことが続き、スイッチが切れたようにまた眠りにつく。

ググれば色々なことが書いていあるのだけど、結局十人十色。色々な体験談から自分に近しいものを選んで納得するしかない。


朝、起きしな理子にはっきりとした口調で言われる。「パパどうしてここに足があるのよ。パパ嫌い」
悪夢は現実でも続いている。しかたがなく僕はまた眠りについた。


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