2018年7月17日火曜日

長子の葛藤

夜中に理子はうなされている。ママは会いに行ける距離にいるのに、家に帰ってこないことが理解できていないということのようだ。
それと夜中の寝苦しさもある。エアコンはタイマーで3時間セットしているけれど、ちょうどタイマーが切れる頃にもぞもぞとしている。そして起きてしまう。「ママ、ママー」と叫ぶ。暴れる。
最近は体が成長してきたために、蹴り上げられると結構痛い。だから必死になだめる。

そのうちに、口で言ってなだめるよりも、エアコンをさっさとつけて室温を下げたほうが寝ることに気がつく。もう日本の気候は変わってしまったと認めざるをえない。世代的なのか、生まれた地域性なのか、僕はエアコンを使うことが悪のように染み付いてしまっている。初めて住んだ東中野のワンルームには、エアコンは付いていたけれど、ほぼ使わなかった気がする。
しかしもう時代は変わってしまった。そして気候すらも変わった。エアコンは使わなくてはならない。


朝、起きてパンを食べる。理子は一枚を食べきることができないでいる。
父はテレビの一週間まるごと録画にいたく感動している。そして地上波で放送していたジュラシックワールドを見て、理子に非難されている。


昼ごはんは母が懐かしい味のする焼き飯をつくってくれた。特別な何かをしているわけでもないのだろうけど、僕が作るそれとは違って、きちんと昔から作ってくれていた母の味がする。

ご飯を食べ終えると、父が運転する車で病院へと行く。昨日とは違う顔のれいちゃん。だんだん皮膚の色が変わって、表情に落ち着きが出てくる。まだなかなか目を開けてはくれない。花さんに聞くと昼間は寝ていることが多いのだけど、夜中に起きているようだった。

しばらくすると、花さんのお父さんがくる。どうやら駅から歩いてきたらしく汗びっしょりだった。父親同士はかなり久々に会ったんじゃないかと思う。理子の100日のお祝いの時だったか。孫きっかけで親同士が顔をあわせるのはいいことだと思う。

しかし父親同士というのは照れ臭いのか、あまり言葉をかわすこともなく、帰って行った。うちの父はれいちゃんを抱っこしてから帰ったのは意外だった。


理子はれいちゃんの世話をしようとするのだけど、どうしていいのかわからないといったふうだ。メルちゃんとは違うから仕方がない。けれど一生懸命さは伝わって来る。
うまくいかないことで嫌気がさしたのか、花さんのiPhoneでユーチューブを見はじめてしまった。

理子にとっては花さんに甘えたいけどなかなかそれも出来ず、なにかお世話をしようとすると止められるし、ふて寝してしまった。我々は理子をベビーカーに乗せて歩いて帰った。


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