2013年10月17日木曜日

HARD DRUNKER

土曜

休日ではあったのだけど、仕事に行った。
その時はまだ曇り程度の天候で、自転車で通勤した。

会社につくと、とある学校のパンフレットのレイアウトを進めた。
突発的に入ってきた仕事で、それ故に入稿まであまり時間がなく、
休日を返上しての仕事だった。
15時からスタートし、20時前には終える事が出来た。
僕は自転車に乗って会社を出た。

HANAはその頃、新宿へと向かっていた。
友人と待ち合わせをしていたのだ。
僕はHANAに連絡をし、新宿にいることを確かめた。
その頃雨が降り出していて、自転車を駅前の駐輪場に止めると
山手線に乗って新宿へと向かった。

新宿に着くと、カメラ屋に入り、フィルムを5本買った。
伊勢丹前で待ち合わせをしていたので、そこに向かったのだけど
HANAの姿はなかった。
電話をかけ直してみると、三丁目方面へと移動していた。
ようやく姿を見つけると、HANAは既に友人と落ち合っており、二人一緒だった。

挨拶もそこそこに近くにあったメキシコ料理屋へと入った。
普段なら明るく元気な彼女ではあったのだけど、
この日は心ここにあらずといった風だった。
その証拠に、まずノンアルコールであった。
「さっきまで仕事をしてきたの」と彼女は言った。

なぜそのように元気がないのかという理由は、事前に聞いていた。
それなりに事情に詳しい僕であったので、
少しでも気がまぎれるように話をした。
顔の似た夫婦がステレオで慰める。
しかしあまり効果はなかったようだ。
飲み始める前は、カラオケに行きたいと言っていたのだが、
会計を済ませた後、彼女は家に帰って行ったのだった。
僕とHANAは、そんな彼女を見送ると、
悩みの深さをその背中に感じるのであった。

カラオケをして、タクシーで帰るのだろうと思っていた我々は
健全に地下鉄に乗って帰宅した。



日曜

休日ではあったのだけど、HANAは仕事に行った。
彼女を見送ると、昼食を作って食べた。
そして洗い物をし、洗濯をした。
HULUで映画を見て、読書をした。
実に日曜日であった。

夕方過ぎて、シャワーを浴び、身支度を整えた。
少し風が冷たくなってきていたので、ジャケットを羽織った。
そしてカメラを持って、家を出た。
電車に乗って、三軒茶屋で降りると、改札の向こうにHANAはいた。
白いシャツにレザースカート、KENZOのバンズを履いていた。
HANAの手を取り、階段を上り、赤鬼へと向かった。
店には次から次へと新規の客が入って行くのだけど、
予約をしていなかったようで、すぐに外へ出て行った。
HANAが予約をしていたので、僕たちはすぐに席に着く事ができた。
ビールを飲み、しばらくすると、待ち人が現れた。
日本酒を飲みたいと言ってこの店を選んだ彼女は、なんと和服を着ていた。
自分で着付けて、やってきたらしい。

はじめ、彼女はビールを飲んでいたのだけど、
2杯目はもちろん日本酒だった。
そして僕も酌をしてもらったのだけど、これ以上にないシチュエーションであった。
遅れてやってきた一人も加わり、おちょこを重ねていった。
日本酒を飲む際にありきたりな台詞である「水みたいにぐいぐい飲める」と
調子づいて飲んでしまい、かなりの量を飲み、かなりの会計をするハメになった。
しかしながら、だれからともなく2件目へ、という話になって
酒の飲める中華屋へと入った。
店に入るや否や、僕はテーブルに突っ伏してしまった。
思い出したように目を覚まし、トイレに入ると胃の中の物を吐き出した。
そして何食わぬ顔をしてまたテーブルに突っ伏すのであった。
自分で言うのもなんではあるが、お店で寝る事は珍しい。
次に目を覚ましたときは、僕は家のソファにいたのだった。
僕の記憶は赤鬼に置いてきてしまったようだった。



月曜

実に休日であった。
ソファで目を覚ました現実を受け入れる事は出来なかったらしく、
またソファで寝た。
しかし、この日、15時に友人夫婦を家に招く予定だったために、
それなりの時間に起き、ご飯を食べ、掃除をし、近所のスーパーに買い物へと出かけた。
ビールを購入したのだけど、僕はその時はまったく飲みたいと思わなかった。

彼らは15時を少し回った頃にやってきた。
紳士は約束の時間から少し遅れてやってくるものなのだ。
手みやげにケーキを買ってきてくれていた。
彼らをソファに通し、ビールをグラスに注いだ。
それを見ていたら、ビールを飲みたくなったので僕も飲む事にした。


HANAは前日から料理の下ごしらえをしていて、冷蔵庫には所狭しと食材が並んでいた。
それらを少しずつ彼らに提供した。
春先に自身が結婚式を挙げる予定なので、その前に、僕たちの結婚式のビデオを
見せてほしいというのが彼らの訪問の目的であった。

ビデオを見たいと進んで言う紳士は稀だったので快諾して、今日に至ったわけである。
僕とHANAは「この場面は、プロポーズの起源から習って、それを再現しているのだ」とか
「両親にまんべんなく式に参加してもらうために、
役どころを作ったんだ」などと説明をした。

彼らは「ふむふむ」と興味深そうに見てくれていた。
話をして行く中で、やらないつもりだったことも、
ビデオを見ていたらやってみようか、などと思いが変わったものもあったようだった。

ビデオを一通り見終わると、
僕が毎年HANAの誕生日に作っているHANA BOOKを、彼らに見せた。
カメラが趣味な彼には、プリントして形にすることの大切さを説いた。
そして、記録とともに記憶にもきちんと残せるように日記を書いたらいいなどと
偉そうに言った。
少し酔っていたのだ。
しかしながら、彼らはそんな僕の発言を茶化す事なく、真剣に耳を傾けてくれていた。

僕のような人間の存在を、彼らの心の片隅に置いてもらえれば、
何をやったって恥ずかしくはないと思ってもらえる事であろう。
好きな人の写真を一冊にまとめて製本して毎年プレゼントするなんて
どこのだれがやるというのだ。


宴もたけなわ、酔いきる前に彼らは帰っていった。
こうして酔いどれの3連休が終わったのであった。

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