2019年9月28日土曜日

あなたの最高の1日はここから


「 YOUR BEST DAY EVER BEINGS HERE」
この旅最後の行き先であるサンウェイ  ラグーンで見かけた看板に書かれていた言葉だ。
旅の大半が理子対応となっている昨今なのだけど、この日訪れたのもその最たる場所だった。動物園や数種類の屋外プールが併設されていて、ホテルやショッピングモールもある。超巨大施設である。
ホテルから GRABで配車したタクシーに乗って数十分。到着するとそこにはバスで乗り付けた団体客や、様々な国籍の人がいた。花さんはネットでチケットをすでに買っていて、オンラインで購入済みのレーンに並んだのだけど、係りの人がなかなか要領を得ない人で、なかなか発券されない。なんのためのオンラインなんだろうかとも思う。

チケットはリストバンドになって、手首に巻いてから入場した。少し汗ばむくらいの陽気になってきて、実にプール日和である。
しばらく歩くと冒頭の言葉に出会った。あなたの最高の1日はここから、みたいなとこだろうか。理子はうきうきが止まらない様子だ。

園内が広すぎて、どこから回ればいいのかよくわからなかったのだけど、動物園からスタートすることになってしまった。とはいえ、日本で見るよりも空いていたのでゆっくりと見ることができたのはよかった。

そしていよいよプールゾーンである。服の下に水着を着込んでいた理子は、ロッカーでの着替えなどをすっ飛ばして一目散にプールへ。花さんも同様だったので、僕は玲さんとパラソルの下で待機することにした。玲さんにも少し疲れがでていたようで、咳がでていたため大事をとってプールはやめることにしたのだった。
だだっぴろい波の出るプールに、客は10人くらいしかいない。しかも大人ばかりだった。まわりには流れるプールもあったのだけど、そこには誰もいなかった。
理子の様子を眺めながら、椅子に座ってまったりしていると、草の茂みからノソノソと大きなトカゲのようなものが歩いてきた。全長は70センチくらいはあったであろうか。動物園が併設されていることもあって、逃げ出したのか、そもそも放し飼いの君なのか、判断がつかなかったけれど、とくにどうすることもしなかった。

ある程度時間が経った頃、花さんと交代した。すぐ近くに子供用の数種類の滑り台があるところを見つけたので、そこに行くことにした。ここも僕らの他には1組の親子しかいなかったので、遊び放題だった。最初は怖がっていたけれど、一度滑ってしまえば楽しさを覚えて、自分から階段を上って行き始めた。あまりにも楽しそうに滑っていくものだから、僕もやってみようと思って登ると監視員に止められた。ちょっと恥ずかしい。

また花さんと交代して、というのを何回か繰り返してから、違うエリアに行くことにした。波の出るプールというよりは、浅瀬の湖のようなところだった。
ビーチチェアを陣取って、また泳ぎに繰り出す理子。

周りを見渡すと先ほどの場所よりも多くの人がいる。そしてこういう場所でも宗教の色が色濃く出るのだなと思ったのだけど、女性は顔以外のほぼ全身を覆った水着を着ていた。それは大人から子供までそうで、セパレートのものを着ている人などごくわずか。おそらく観光客なのであろう。男性はいたって普通の格好である。
そういえば、女性の格好も、ヒシャブで髪を隠す人もいれば、全身真っ黒で目の部分だけ肌が見えている人など様々だった。逆にパッと見で服装に宗教色が現れない人もいた。
肌の色も様々で、インド系の褐色から日本人よりもちょっと濃い、くらいの人までいた。

ペトロサインスの中にも祈祷する部屋があったし、僕たちの泊まっているホテルの天井には、イスラムの聖地を指す矢印が書かれていた。この国の当たり前を考えた時に、日本でこういった人たちは快適に過ごせているのか、ふと疑問に思った。空港には祈祷室があると聞いたことがあるけれど、日常生活レベルで対応できているのか。例えば仕事をしている女性がヒシャブをつけることを許されているのか。全身真っ黒の服を着た人を奇異な目で見たりしてないかなどなど。来年のオリンピックでは『オモテナシ』以前に彼らの普通を用意できているといいのだけど、と思う。


そんなことをぼんやりと考えていると、現地人ふうの男性がスマホで写真を撮ってくれという。彼はどうやら僕の隣のチェアで寝そべっている女性とともに、こっそりと映して欲しいようだった。なんだかあとで変なことに巻き込まれたくないなと思ったし、当然のこととして彼一人をバーストで撮影した。彼にスマホを返すとまんざらでもない顔をしてサンキューと言って仲間のところへ去っていった。ただ本当に撮ってほしかっただけなのかもしれない。

理子が花さんと戻ってくると、ご飯を食べた。理子はバーガーキングである。食事を終えるとすぐに浮き輪を持ってプールへ戻ってプカプカと泳ぐ。すっかりと食事はついでのものである。

散々遊び倒して17時だ。空が明るいのでまだまだいけそうな気もしてしまうのだけど、帰ることにした。やはりここでも GRABの登場である。ここにおいては、 GRABを利用する人向けの、空調つき待合所があった。すっかりと浸透したシステムのようである。
タクシーに乗って最後の車窓を眺めると、やっぱりどこもかしこも何かを建設中である。土地が有り余ってるのか、それともスクラップアンドビルドなのだろうか。経済を回すのに積極的ということなのだろうか。日本はすっかり遅れをとっているんだろうなと思わされる。


ホテルに着いて、一休みしているともう20時である。今日の食事はどうしようか?と花さんが言うので、僕は「もう一度ハッカレストランに行きたい」と言った。もう一度チャーハンを食べたかったのだ。
店に行くと、すでに屋根を開けた状態だった。席に案内されると「ハイチェア?」と聞かれる。理子用に椅子は必要か?というわけだ。お願いすると、なんてことない。大人用の椅子を2つ重ねて高くするという荒技だった。でも確かにテーブルに対してちょうどいい高さになった。
今回は鍋はやめて、チャーハンの他に、青菜炒めと豚の角煮と蒸しパンなどを頼んだ。もちろんビールも注文する。
旅行前に花さんは断乳していたので、アルコールは解禁されている。やはり一人で飲むのではなく花さんと飲む方が楽しい。しかしガラスが空になると注いでくれるのはカールスバーグお姉さんだった。見つけて注ぐまでが素早すぎる。

マレーシアで食べたご飯のなかで、やはりここが一番おいしかった。豚の角煮と蒸しパンのセットは絶品だった。玲さんに至っては、今回はお弁当パックを持たず、ここでの料理を食べてもらった。初めて食べる食材もいくつかあったのだけど、とくに問題なかった。

ホテルに帰ると、荷物の整理をした。翌日は超早朝の4時起きである。そして僕は日本へ、花さんたち3人はシンガポールへと行くことになっている。実に旅に貪欲な妻である。
疲れ切って眠る3人に対して、玲さんはやはりベッドの上を徘徊してしまう。そして最後の最後でベッドから落ちて大号泣してしまった。とりたてて別状はなかったけれど、心臓に悪い出来事だった。

長いながいマレーシア旅行が終わる。


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