2018年5月19日土曜日

交差点

朝、理子を保育園に送りに行くのは大抵花さんで、家をでて下り坂を進み、小さな交差点を渡ったところでバイバイする。
後ろ姿をしばらく見送ったあと、駅へと向かう。イヤホンをつけsoundcloudを立ち上げる。そして特にどの曲をというわけでもなく、誰かの曲を聴いて駅まで歩く。
道中、建設途中のマンションがあって、朝から工事をしている。工事が始まったばかりのころ、防音シートが張り巡らされ、関係者入り口のところに、工事の人向けと思われる飲料自動販売機が一台設置された。それから、今では3台目が設置されていた。伊藤園 、ダイドー、コカコーラ。次はコンビニでもできるんじゃなかろうかと思う。

駅のホームに着くと、鞄から文庫をとりだす。今読んでいる本は、ヘミングウェイの『移動祝祭日』。エッセイというのか日記というのか、パパのパリでの日常などが書かれている。話の中にピカソが出てきたりして、映画『ミッドナイトインパリ』の情景が思い浮かぶ。時代背景が立体化して面白い。
とはいえこの本は10年近く前に、当時の職場でもらった本。当初はパラパラと何項目かを読んだだけで終わっていたものを、掘り返して今読んでいるというわけだ。
翻訳物にどうしても抵抗があるので、ショートストーリーを読むのは気持ち的に楽だった。

電車の乗り換えを一度して、一駅。駅直結のビルに職場はあり、そこでデザインの仕事をする。外出は食事の時くらいなもので、18時までほぼ机の前に座っている。
仕事はウィークリーの媒体で、内容は特集、ニュース、連載などとある。時折、下版のタイミングで大きなニュースが流れてきて、記事を差し変える、などということもある。ここのところで一番職場がざわついたのは、リカルドティッシがバーバリーのクリエイティブディレクターに就任したときだろうか。

18時に会社を出て、電車に乗って保育園にお迎えに行く。以前の生活リズムでは気づくことはなかったのだけど、この時間帯に帰宅している人たちが意外にも多いように思う。自宅の最寄駅でも、スーパーで買い物をしているサラリーマンの姿をよく見かける。こういう生活をちゃんと手にしている人もいるのだなと思う。

18時50分、理子のお迎えに行く。「まるでシャワーでも浴びたかのように汗だくだった」と先生に言われる。まだ5月だというのに、これからどうなってしまうんだろうと思う。

「今日は何をして遊んだの?」
「ここちゃんと遊んだよ!」

話をしながら歩いて行くと、朝、花さんと別れた交差点。そこに花さんがいる。
「ママー!」と駆け寄る理子。

交差点を渡り、坂道を登って家に帰った。



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