2018年5月14日月曜日

家族写真

狭っ苦しい都内では考えられないのだけど、BBQをやろうといって自宅の敷地内でやれてしまうのが地元のよさである。
隣近所と近接していないし、問題ないようである。とはいえ僕が子供のころは自宅でBBQをやるという文化はなかった。

完成したばかりの庭で、それをするのに抵抗があったかもしれないのだけど、思いっきり肉を焼いている。祖父母も加わっていたので、アウトドア用の簡易テーブルでは足りず、近所のカインズホームで買い足しにいった。父の運転する車に乗って僕も付き添った。僕も免許はあるのだけど完全なるペーパードライバーだ。
僕はホームセンターと呼ばれる店が好きである。今の僕の生活圏内ではなかなか見つからない。東急ハンズというのはまた種類が違うように思う。
近所にこんな店があったら、木の板を買ってきて、棚を取り付けたり簡易的なDIYなどを楽しめそうなのに、と思う。

このホームセンターが出来たばかりのときはなぜこんな町の外れのようなところにつくるのだろうと思っていたけれど、今ではその敷地を拡張し食材を扱うスーパーまで出来たようである。当然のことながら店内は馬鹿広い。目的の商品を見つけるまでかなり右往左往してしまった。結局父がそれを見つけた。

家に戻って組み立てる。ここのところ風の強い日が続いており、この日も御多分に洩れずであった。紙皿は吹き飛び煙はまっすぐ上に伸びていかず、隣近所に撒き散らしていた。

子供達は庭を駈け回りなかなか食べようとしない。風も吹いていて寒さすら感じるということで、僕はあまりビールを飲むこともなく、それなりの時間に終了した。


僕は屋根裏部屋にもぐりこみ、漫画を読みふけった。昔はかなり大量の漫画があったのだけど、今ではその数はだいぶ減っていた。とはいえ車庫として使っていたガレージに大量に保管されている。
僕は幽遊白書の仙水編から読み始める。それが読み終わると飽き足らず、レベルEを読む。
子供達はもう寝室で寝始めている。この日も理子の争奪編が繰り広げられているようで、一人の女を奪い合う怒号が聞こえ、泣き叫ぶ声が聞こえ、「理子なんて大嫌い!」となんだか恋愛の縮図のようなものが行われていたようだった。

彼女たちが寝静まった頃寝室に入ると、めいめいがマティスの絵にでも出てきそうな格好をして寝ていた。いずれも布団から大きくはみ出し、どうしてそこに留まることに決めたのか、という場所で。僕はその合間を縫って布団に体をうずめた。眠りにつくまでには時間がかかった。誰かに蹴られるからだ。



夜更かししたせいで朝は遅かった。
この日の昼過ぎには帰ることになっていたので、食事を済ませると、荷造りをした。
帰る前に、田子の浦にある公園に連れて行ってくれた。この場所は初めてきたのだけど、かなりいい場所だった。広大な土地はきちんと整備され、遊具があり、船を模したアスレチックがあった。海のすぐ近くということで景色がよかった。結婚衣装を着たカップルが写真撮影もしていた。抜群のロケーションだった。
シンボルチックな高い建物に上ると、富士山の裾野まで見渡せた。地元の良さを再発見できるようなそんなスポットだった。当然のことながら子供達はその辺を駆け回った。

お昼が近くなると、漁港に行き、しらすを食べることにした。併設された食堂があり、そこは長テーブルがいくつも並べられた場所だった。なんだかとってもグッとくる場所。綺麗とは程遠い雰囲気だけど、とてつもなく美味しいものが食べられる予感がする

すでに完売したメニューもあったのだけど、僕が食べたのは釜揚げしらすと生しらすの丼だった。生しらすを食べたのは初めてのことではないのだけど、ここで食べたのはまるで「うに」のような味がするものだった。当たり前のことを言うとかなり美味しかった。
美味しさとは別に、贅沢な味がした。


食事を終えると車に乗って家に戻った。そして家族写真を撮ることにした。

新しい家を背景として、今ある家族の姿を撮っておきたかった。それは今あることがいつまでも続くわけではないという想いがあるからだった。
家族と離れて暮らしていると、特にそう思う。祖父母は高齢だし、ここ最近入院もしていた。年老いていく姿も半年単位で見ることになり、予感もなくなにかが起きてしまうことがあるかもしれない。家族に会うのは、日にちではなく、回数でしか数えることができないといっても過言ではない。
そういったわけで、父とともに三脚をセッティングし、カメラを構えた。


兄は新しい家を建てた一家の主としての顔。
子供達は強く照らす日差しに文句を言ってる顔。
それぞれの母たちはそんな子供たちを優しく見つめていた。
そんなそれぞれの顔が写真に映し出されていた。


写真を撮ったあと駅まで送ってもらった。その直前、お世話になった近所の(もう一人の父たち)が顔を見せに来てくれた。あまり喋ることはできなかったけれど、会えてよかった。


帰るたびに「結局地元」って思う。
花さんにとっては本当の地元ではないけれど、そのように思ってくれてたら嬉しい。


僕たちは東京に帰って行った。





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