2012年7月30日月曜日
5th day
「もしかして、日本人の方ですか?」
パムッカレからセルチュクにバスで移動し、
さらにそこからエフェスへと向かうワゴン車の中で、唐突に話しかけられた。
トルコにおいて、日本人以外に日本語で話しかけられる事はしばしばあることだったので
また陽気なトルコ人かと思って振り向くと、
果たしてそこには、そのまんま日本人がいた。
「日本人ですよ」と答えると、
「良かった、一人で少し心配だったんです」とその男性は答えた。
話をしてみると、一人で旅行にきており、まだトルコに到着したばかりだったらしい。
エフェスに向かう間、トルコにおいては少しだけ先輩の我々が彼の疑問に答えていた。
彼の名前はタケダさん、と言った。
パーティーに一人加わった。
目的地に到着すると、浅草寺前の土産物屋が並んでいる通りのように
さまざまな店があった。
当たり前のように日本語を駆使して、僕たち3人を店に誘導しようとする。
ある人は「落としましたよ」と言う。
日本人はこれを言われると確実に足を止めて振り向くらしい。
ある人は「そんなの関係ねえ」と言う。
日本人はこれを言われると足は止めずに笑って通り過ぎる。
ある人は「あるある探検隊!」と言う。
日本人はこれを言われると、全部ちょっと古いぜ、と思った。
エフェスは、都市として成り立っていた遺跡が、
かなり保存状態の良いまま残されていた。
タケダさんとともに、我々は灼熱の太陽が照りつける中、歩を進める。
見渡す限り、すべて遺跡だった。
ちょっと腰掛けた石も、その辺に横たわっている柱も、
紀元前16〜11世紀のものだという。
当時、図書館や劇場、議事堂などの施設があったといい、
実際に、当時使われていたトイレというのもこの遺跡のなかにはあった。
また、勝利の女神のニケのレリーフもあった。
いわずもがな、ナイキの由来の女神だ。
慣れぬ石畳と、暑さでかなりバテていた。
常に持ち歩いていた水は、誇張でなくあっという間にお湯と化した。
とりあえず、最後まで上りきろうと鼓舞し、
入ってきたのとは逆側のゲートまで向かった。
そこには土産物屋があり、なかではスムージーを売っていた。
実にうまい商売である。
土産物はまったく見ず、すぐさまスムージーを注文し、木陰で飲んだ。
その付近では、無人でスプリンクラーが稼働しており、植物に水をかけていた。
僕も暑さが限界だったのでその水を浴びた。
タケダさんと歩きながらいろいろな話をした。
最初は少し当たり障りのない話をしていたのだけど、
そのうち日本にいる恋人のことや、少しだけ突っ込んだ話もした。
二人で映る写真がないだろうから、と何度も写真を撮ってくれた。
トルコで日本人の優しさに触れた。
一通りエフェスを堪能した後、僕たちはシリンジェ村へと向かう事になっていた。
タケダさんとは連絡先を交換してバスターミナルで別れた。
シリンジェ村へと向かうバスを見つけ出し、ワゴン車に乗って移動した。
シリンジェ村は、かわいらしい町だった。
ワインが有名なこの村は、山に沿って家々が建っており
土産物屋や食堂が並んでいた。
この村では女性が働いている姿をよく見かけた。
とは言っても店先で織物をしたり、店番をしてるといったふうだった。
時間に限りがあったので、街全体を見渡せるレストランに入り、
食事をし、ビールを飲んだ。
犬が僕の足下でちょこんと座っていてかわいらしい。
世界遺産に登録されそうだというこの町に、もう少し身を止めておきたかった。
ターミナルまでワゴン車で戻ると、
イスタンブールに向かうために、イズミル空港行きのバスに乗る。
HANAは座席に座る事ができたが、僕はワゴン車に立ち乗りという格好だ。
地元の人にとってはちょっとそこまで行くバスと言った風で
なんの変哲もないところで何度も止まっていた。
一人のおじさんが手招きし、席を譲ってくれた。
HANAは疲れきってしまったようで、
隣に座っているトルコ人の男性の肩に体を預け、すやすやと眠っていた。
バスが不意に揺れ、HANAが目を覚ますと、
そのトルコ人の男性は実にナチュラルにウインクをし
どこからともなくおしぼりを差し出した。
なぜおしぼりだったのかは分からないが
「独身のときにこれをやられていたら…」と後日談でHANAは語った。
トルコ人のホスピタリティは素晴らしい。
結局のところ、空港に行くのは我々二人だけだった。
しかしそのワゴンバスは空港までは連れて行ってくれず、
すごく中途半端なところで止まった。
それを待ち構えていたかのようにタクシーが我々に近寄ってきて、
まんまと僕たちはそれに乗った。
空港について、搭乗手続きを済ませた。
隣のカウンターでは、5〜6人の客がスタッフに食ってかかって怒鳴り散らしていた。
僕たちの前に並んでいたおじさんは
「暑いからあんなふうに怒っちゃうんだよ」と言って笑っていた。
小腹が空いた僕は、バーガーキングで巨大なセットを注文した。
空腹でも人は機嫌が悪くなるのだ。
登場時間になり飛行機に乗るとあっという間に眠りに落ちた。
1時間程度のフライトにも関わらず、食事が出てきて
僕はまったく食べる事ができなかった。
イスタンブールに到着すると、タクシーに乗って予約してあるホテルへと向かった。
タクシーのおじさんは老眼で地図が見えずらかったらしく
途中、タクシー仲間の人に道を聞いたりしてなんとかたどり着く事ができた。
HANAが予約したホテルは天井からたくさんのランプが吊り下った
なんとも素敵なホテルだ。
内装もとてもかわいらしく、旅の最後を過ごすにはとてもいいホテルだった。
ベッドに仰向けになり、天井から吊り下ったランプを数える。
所々、電球が消えているところがある。
全部点いていたら、まぶしいでしょ?という
トルコ人のホスピタリティなのだろうか。
いや、きっと、たぶんそうではないだろう。
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