2012年7月27日金曜日
2nd day
知らない土地で眠りから覚めたときの感覚というのは気持ちがいい。
清潔なシーツと固めのマットレス。外からはすべての人々を眠りから覚ます音量で鳴り響くイスラムのお経。
思わず隣にいるHANAと目を見合わせてしまう。
窓から外を眺めてみると、壮大なカッパドキアの姿が目に飛び込んできた。
なんという凄まじい光景だろう。
この世のものとは思えない、目にしたことのない景色に僕は言葉を失う。
しばらくしてから、HANAとともに服を着替え、
朝食をとる前に外を散歩する事にした。
一歩外に出ると、太陽の光が地面を厳しく照らしている。
サングラスをかけないとまぶしくて目を開けているのがつらいほどだ。
土産物屋は朝早くから開店しているが、人の気配はない。
野良犬があてもなくふらふらと歩いている。僕たちにはまるで興味がないようだ。
ホテルの周りを15分程歩いてから、朝食をとった。
バイキング形式で、各々が食べ物を皿に取っていると、
若い従業員が、オムレツはいるか?と聞いてくるので作ってもらうようお願いをした。
慣れた手つきで卵を割り、ささっとかき混ぜフライパンに投げ込むと、
あっという間に皿に盛り、手渡してくれた。
テーブルについて景色を見ながら食べていると、
真っ黒に日焼けしたホテルのオーナーが近くの席に座ってタバコに火をつけた。
そして「日本人か?」と聞いていた。
僕たちは「そうだ」と言った。
「日本のどこだ?」と聞くので「東京からきた」と答えた。
そして、これからどこに行くのか、どういう予定であるかなどの話をした。
実にゆったりとした口調で。
なにも急ぐ事はない。ここはトルコだぜ?と言わんばかりだ。
彼はタバコの火をもみ消すと、違うテーブルへと向かっていった。
食後にコーヒーを飲んでいると、空の向こうで気球がゆっくりと上昇していく姿が見えた。
明日は僕たちもあれに乗るのだと思うと胸が高鳴った。
部屋に戻って身支度を整えると、グリーンツアーに参加すべく、バスターミナルへと向かった。
受付を済ませると、ワゴン車に乗り込んだ。
ガイドから説明があり、一人一人に名前と出身を確認した。
車内には、今朝到着したばかりだというカナダ人一家や、スペイン人、
アメリカ人夫婦など実に様々な国籍の人がいた。
中には一人で参加している女の子もいた。
まず先に向かったのはギョレメの丘だ。
カッパドキアを見渡せる場所で、360度の絶景が僕たちを待っていた。
チープな表現をするならばドラゴンボールのナメック星だ。ユンザビット高原だ。
ゴテゴテと不規則な小さな白い山が並んでいる。
自由時間を与えられたがガイドが10分で戻ってこいというので、
従順な日本人観光客の僕らはきっかりと時間を守ってバスへと乗り込んだ。
そのほかにセリメの丘、デリンクユ、イヒララ渓谷へと行った。
イスラム教の国トルコ、とばかり思っていた僕には意外なものばかりがそこにはあった。
イエスキリストの壁画がいたるところにあった。
トルコはさまざまな支配の中、キリストとイスラムを往復していたのだ。
とにかく日差しの強い中、歩きに歩いた。
そして洞窟の狭い道をひた歩き、川辺を虫の音を聞きながら歩いた。
狭い地下道を歩いている時、スペイン人の女性が歌をうたっていた。
HANAがスペイン語で「こんな時は歌が必要ですね」と言うと
彼女は嬉しそうに「そうだね」と言った。
会話は人を身近にさせる。
ツアーを終える頃には、英語圏の人たちはすっかり仲良くなっており
人生相談などが始まる程だった。
唯一アジア圏の僕たちは、そういった意味では孤立しながらも
見るものすべてに一喜一憂し、二人で感動を分かち合っていた。
夕方頃にツアーは終了し、元のターミナルに戻った。
そして誰からともなく集合写真を撮ろうと言って、みんなで写真を撮った。
みんながなんともいい笑顔をした。
おそらくもう二度と会わない人たち。素敵な時間を共有できたことに感謝した。
一度ホテルに戻り、休憩してからまた近所を散歩した。
トルコはなかなか日が暮れない。
8時になってようやく夕暮れだ。小高い山にあるレストランに入り夕食を取った。
ちょうど夕日がカッパドキアに降り注ぐ。そんな姿を見ながらエフェスビールを飲んだ。
HANAがどうしても食べたいと言って、テスティケバブを注文した。
これは、つぼに入った煮込みで、とてもおいしかった。
デジカメで撮った写真をお互いで見せ合って、どこが一番よかったか、と話をした。
僕が一番有意義に時間を過ごしたのは川沿いを歩いた渓谷だ。
時間がゆったりと流れていた。すれ違う人は皆優しい。
川のせせらぎ。虫の音。踏みしめる大地。
照りつける太陽は僕の肌を焦がしたけれど、いろいろなものを体全体で吸収した。
トルコの2日目が終わった。
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