久々に連絡を取った友人と、食事をすることになった。
お店の予約は19時にしたのだけど、その前にちょっと散歩しないか?と言う。
「カメラを持ってさ、公園でも行こうよ」彼は言った。
僕は彼がそこまでカメラが好きだとは知らなかった。
HANAと一緒に家を出た。
食事予定の3時間前に代々木公園で落ち合った。
彼はデジタル一眼レフカメラを肩から下げていた。
相変わらず背が高くてスタイリッシュだ。
「久しぶりだね、でもそんな気もしないね」
久々に会う友人たちへの第一声は大概がこれだ。
僕は、友人から譲り受けたTC-1を彼に見せた。
フィルムカメラを持ってきた僕に彼は驚いた様子だった。
若干日の暮れかけた時刻ではあったけど、春の陽気が気持ちいい。
僕はアウターを脱いで手に持った。
代々木公園にきた事がないという彼は、
芝生で寝転がっている人や、ギターの練習をしている人などを
不思議そうな顔をして眺めていた。
明治神宮方面から歩いて行って、噴水を抜け芝生の上を歩き、
ドッグランをしばらく眺める。
代々木公園のドッグランは大型犬、中型犬、小型犬、超小型犬と分かれている。
休日の、晴れた日のわりには人、犬が少なかった。
そこを後にすると、人通りの少ないコンクリートの道へと出た。
「ここで使えそうだな」と言って、僕はリュックサックに入れていたpennyを取り出した。
リュックサックから取り出したそれに、彼は驚いた様子だったけれど
「昔ちょっとかじっていたことがあるんだ」と彼は言って
それを地に這わせると、でかい体を巧みに操ってスイスイと漕ぎ出した。
僕は彼から預かったカメラを借りて、一眼レフの面白さに興奮していた。
僕らの他にもカラフルなpennyを使って遊んでいる人が多く見られた。
HANAは「私もやりたい」と言って上着を脱いだ。
片足をボードに乗せ、まるで小さな子供が初めて自転車に乗るようにそっと進みだした。
「意外に乗れるわ」と言ったのもつかの間、
ある瞬間に彼女の体は宙に浮かんだ。
そして自然の摂理に乗っ取って体はコンクリートの地面に叩き付けられた。
まったくスピードは出ていなかったものの、
受け身を全く取らずに落下したためか、彼女はしばらくその場から動けなくなった。
転んだ事を現実として受け止められない子供のようだ。
実際彼女の肘は擦り剥け、腰から太ももを強打しており、目には涙を浮かべていた。
それでも彼女は負けず嫌いな性分で、その後も何度もトライしていた。
僕はそんな彼女をファインダー越しに見つめシャッターを切った。
日が暮れ、肌寒くなった頃、ボードに乗る事をやめ僕たちは渋谷の雑踏へと消えて行った。
後日、彼から写真が送られてきた。
一部を拝借して、ここに載せる。
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