目を覚ますと、hanaは既に仕事に出かけていた。
とある大学の施設を貸し切ってのイベントのための休日出勤だ。
僕は、1階に降りて顔を洗い、朝食とも昼食ともならない食事をとった。
ラジオをつける。パンを二つトースターに入れる。
オレンジジュースをコップに入れて飲む。
テレビを見なくなってからラジオでの生活が続いている。
聴覚だけの情報で、物足りないかとも思ったのだけど、
意外にも天気予報は聞き逃さなかったり、ニュースもちゃんと聞けて捗る。
溜まっていた食器の洗い物と、洗濯物を片付ける。
寒さも和らいできて、洗濯物も早く乾きそうだった。
新居にはベランダはないのだけど、ウッドデッキがある。
そこには蛇口がついていて、元々ホースがついていたので、
それを使って庭に水を撒くことができた。
子供の頃、玄関の前にある小さな庭に向かって水を撒いていた、あの頃と同じだ。
至福の時。
ホースの口をすぼませて、勢いをつけ、遠くにまで水を撒く。
プランターに植えたチューリップの球根からは順調に芽が生えてきた。
春を待ちわびる自然の印だ。
部屋の窓をすべて開け放って、掃除機をかける。
コードレスなので、階段の上り下りも楽にできる。
タバコを吸って休憩してから、自転車に乗って青山へと向かった。
家を出て、駒沢通りを突き進み、246を渋谷方向へ。
駅前のスクランブル交差点を突っ切り青山通りまで出る。
シャツを1枚とTシャツを着ていたのだけど、途中からはTシャツ一枚だった。
それでも汗をかく。
目的の大学につくと、初めて校内に入った。
そもそも大学という施設に入る事自体が稀だった。
hanaと連絡をとりあい、イベントスペースに入る。
数年前まで働いていた会社のイベントであるので、
中を歩いていると、知った顔がちらほらと見えた。
結婚式ぶりに会う知人とも話が出来た。
基本的に女性をターゲットとしたイベントで、
hanaに会う事だけが目的だったようなものなので、すぐに出た。
そもそも一人でうろつく男がそんなにいない会場だったのだ。
自転車に乗って、YANOBETTYの写真展へと行った。
一度行ったことのあるギャラリーだったので、迷わずに行くことができた。
ギャラリーにつくと、まじまじと彼の作品を見た。
彼自身のプロフィールが数行で書かれている。
そのうちそのプロフィールにもキャリアが追加されていくことだろう。
手作りのZINEがあったので見てみると、自分が写っていた。
hanaにも見てもらおうと思って一冊購入した。
ギャラリーを後にすると、牛丼屋で軽く腹ごしらえをして、代々木上原へ向かった。
初台に住んでいた頃によく通っていたKUMBAはお香のお店で、
店に近づくにつれてお香の香りが漂ってくる。
店に入って、ファイリングされたお香を眺める。
それぞれのお香にはキャッチーな名前が付けられていて、
気になった名前を見つけると、それをファイルから取り出して匂いをかいだ。
その昔友人は、自分の好きな人の名前をその中から見つけて購入していた。
僕は『take a break』という名前のお香と、セージを買った。
店を出ると、外は暗かった。
自転車を適当に走らせると、見慣れない道だった。
特に急ぐ必要もなかった僕はそのまま流れに任せて道を進んだ。
そのうち見覚えのある道へと出た。
そして、下北沢、三軒茶屋、駒沢を抜けて上野毛に帰った。
家に帰ると、セージを炊いた。予想以上の煙がもくもくと部屋に立ちこめた。
米をといでご飯を炊き、南瓜を煮付け、
じゃがいもとタマネギとベーコンを炒めたジャーマンポテトを作った。
hanaが仕事から戻ってきて、ご飯も炊けた。
hanaが買ってきたビールで乾杯し、ささやかにお疲れさま会が開かれた。
自転車に乗って今度はどこへ行こうか。
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