2013年3月10日日曜日

自転車

目を覚ますと、hanaは既に仕事に出かけていた。
とある大学の施設を貸し切ってのイベントのための休日出勤だ。

僕は、1階に降りて顔を洗い、朝食とも昼食ともならない食事をとった。
ラジオをつける。パンを二つトースターに入れる。
オレンジジュースをコップに入れて飲む。

テレビを見なくなってからラジオでの生活が続いている。
聴覚だけの情報で、物足りないかとも思ったのだけど、
意外にも天気予報は聞き逃さなかったり、ニュースもちゃんと聞けて捗る。

溜まっていた食器の洗い物と、洗濯物を片付ける。
寒さも和らいできて、洗濯物も早く乾きそうだった。

新居にはベランダはないのだけど、ウッドデッキがある。
そこには蛇口がついていて、元々ホースがついていたので、
それを使って庭に水を撒くことができた。
子供の頃、玄関の前にある小さな庭に向かって水を撒いていた、あの頃と同じだ。
至福の時。
ホースの口をすぼませて、勢いをつけ、遠くにまで水を撒く。
プランターに植えたチューリップの球根からは順調に芽が生えてきた。
春を待ちわびる自然の印だ。

部屋の窓をすべて開け放って、掃除機をかける。
コードレスなので、階段の上り下りも楽にできる。

タバコを吸って休憩してから、自転車に乗って青山へと向かった。
家を出て、駒沢通りを突き進み、246を渋谷方向へ。
駅前のスクランブル交差点を突っ切り青山通りまで出る。
シャツを1枚とTシャツを着ていたのだけど、途中からはTシャツ一枚だった。
それでも汗をかく。

目的の大学につくと、初めて校内に入った。
そもそも大学という施設に入る事自体が稀だった。
hanaと連絡をとりあい、イベントスペースに入る。
数年前まで働いていた会社のイベントであるので、
中を歩いていると、知った顔がちらほらと見えた。
結婚式ぶりに会う知人とも話が出来た。

基本的に女性をターゲットとしたイベントで、
hanaに会う事だけが目的だったようなものなので、すぐに出た。
そもそも一人でうろつく男がそんなにいない会場だったのだ。

自転車に乗って、YANOBETTYの写真展へと行った。
一度行ったことのあるギャラリーだったので、迷わずに行くことができた。
ギャラリーにつくと、まじまじと彼の作品を見た。
彼自身のプロフィールが数行で書かれている。
そのうちそのプロフィールにもキャリアが追加されていくことだろう。

手作りのZINEがあったので見てみると、自分が写っていた。
hanaにも見てもらおうと思って一冊購入した。


ギャラリーを後にすると、牛丼屋で軽く腹ごしらえをして、代々木上原へ向かった。
初台に住んでいた頃によく通っていたKUMBAはお香のお店で、
店に近づくにつれてお香の香りが漂ってくる。
店に入って、ファイリングされたお香を眺める。
それぞれのお香にはキャッチーな名前が付けられていて、
気になった名前を見つけると、それをファイルから取り出して匂いをかいだ。
その昔友人は、自分の好きな人の名前をその中から見つけて購入していた。
僕は『take a break』という名前のお香と、セージを買った。

店を出ると、外は暗かった。
自転車を適当に走らせると、見慣れない道だった。
特に急ぐ必要もなかった僕はそのまま流れに任せて道を進んだ。
そのうち見覚えのある道へと出た。
そして、下北沢、三軒茶屋、駒沢を抜けて上野毛に帰った。

家に帰ると、セージを炊いた。予想以上の煙がもくもくと部屋に立ちこめた。

米をといでご飯を炊き、南瓜を煮付け、
じゃがいもとタマネギとベーコンを炒めたジャーマンポテトを作った。
hanaが仕事から戻ってきて、ご飯も炊けた。

hanaが買ってきたビールで乾杯し、ささやかにお疲れさま会が開かれた。



自転車に乗って今度はどこへ行こうか。

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