ハンマーを持った巨大な猿がやってきて僕の頭を打ちこんで倒れこんだような、暴力的な眠りから目を覚ますとそこは台湾のホテルで、朝だった。久しぶりに村上春樹を読むとこういった現象が起きる。
窓の向こうは喧騒が広がっている。空港の近くということもあってか朝から交通量も多い。大量な原付バイクが道路を埋め尽くしている。これぞ台湾という感じがする。
遮光カーテンの向こうにはレースカーテンなどなく、すっかりと晴れた空模様が広がっていた。傘は必要なさそうだった。
夜中に到着していて疲れていると思うのだけど、割とみんなちゃんと起きることができて、ホテルの朝食をとりに行った。
日本人が多く、台湾感が若干薄いのだけど、用意されたビュッフェの料理を見ると、やはりここは台湾なんだなと思う。南国風なフルーツが目につく。
食堂の窓の外を眺めると、レインボーカラーの古そうな橋が見えた。そしてそこには風がなく元気のない鯉のぼりがかけられている。
鯉のぼりの起源が日本であるなら、それは台湾が日本に対して友好であるという印かなと思った。
ご飯を食べ終えると、僕と理子は階段を使って11階まで駆け登った。エレベーターがなかなか来なかったからである。余計な体力を使ってしまうところが、なんともGWの初日っぽいエピソードだ。
部屋に戻り、支度をしていると不穏な空気が花さんから漂ってきた。
「ケータイがない」サブのケータイが見当たらないのだ。
ひっくり返せるものをひっくり返し、何度も同じ箇所のファスナーを開け閉めしても、そこにあってほしいスマホを見つけることができなかった。
結論としては「飛行機の中で座席前の荷物入れにスマホをなにげなく入れたままである」ということになった。そしてiPhoneの位置を調べると、やはり空港内にあることが確認できた。
空港近くのホテルだったということがせめてもの救いである。電車に乗る必要がある距離感ではあるけれど、空港へ向かった。
英語話者である花さんが、カウンターの女性に話を聞くと、ここを曲がってあそこを曲がってエスカレーターで登っていったこのあたりに警官がいるからそこで受け取ってくれという。
お礼を言って、その場所へと辿り着くと警察官がおり、その手には見慣れたiPhoneが握られていた。
きちんとロックが解除されることを確認した上で、受け取りのサインをしことなきを得た。
旅のスパイスたっぷりであった。こういった時に疲れたとか、面倒だというネガティブなことを言わないことは、子供達のいいところであろう。
そこから電車に乗って、台北市内へと向かった。
車窓からは、高層なビルディング、そして建設中の鉄筋の骨組みも多く見えた。
これからも発展していくであろう光景である。と思えば熱帯感あるモリモリとした力強い木々が姿を見せる。活気があるというのは自然の姿からも垣間見ることができるようだった。エネルギーの強さが人工的なものと自然とで合わさっているようだ。
花さんが予約してくれていたホテルで荷物を置き、街を観光する。
僕は街中にあふれるタギングを見て回るのが楽しく、時々立ち止まっては写真を撮った。
気の利いた雑貨屋さんが多く点在していて歩き回るのが楽しい。僕はとある店で見つけた練り香水が気に入った。理子も気に入った香りを見つけたようだったので一緒に買った。まだ馴染まない日本円換算をしながら買い物を楽しんでいた。
下調べをしていたクッキー屋さんにいったり、かき氷屋さんでイチゴのかき氷を食べると、あまりの美味しさに、マンゴーのかき氷をおかわりしてしまった。
台湾のセントラルパーク、と花さんが称した公園では大量の野良リスと見たことのない大量の鳥がいた。台湾の公園には主に老人が使うであろう健康器具があり、それは子供たちのおもちゃと化していた。
とにかく人がたくさんいて賑やかだった。ただ混乱というわけではなく、賑やかさのなかにも秩序があるように感じ、人が集まるという理由はそういったことにも起因するのかもしれない。
玲はブランコに乗りたいというので順番を待って乗った。遊びたい遊具も子供なりの秩序が存在していた。良い公園だった。
しばらく遊んだのち、ホテルに戻った。そして花さんが予約してくれていた店に行き夕飯を食べた。
この店は予約が必須、しかもなかなか取れないらしい。
気になった料理を一通り頼んだ。
僕は揚げパンや、ひき肉といかと高菜の炒め物が気に入った。そして鮮度の高い台湾ビールはとてもさっぱりした飲みごごちで美味しかった。花さんが絶品だと言っていたエリンギの唐揚げはとても香ばしく、玲もよく食べていた。食事の好みが合うのは安心する。
僕は結局高菜の炒め物を追加した。それをチャーハンにかけたり、麺類にトッピングするととても美味しかった。
夕飯を食べ終えてホテルへと帰る。
相変わらず、昼夜問わず、原付バイクは彼らなりの秩序を保って道路を牛耳っている。クラクションがあまり鳴ることがないというのがその証拠であろう。
僕はやはりシャッターに描かれたタギングを目で追い、家族の楽しそうな後ろ姿を眺めては、台湾の居心地の良さを楽しんでいた。
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