2025年5月7日水曜日

台湾3日目

泊まったホテルは良いホテルだった。洗面台は2つあり、どういうわけかシャワールームとバスルームと別々の構造だった。部屋の中にはモダンなアートが飾られている。キャプションが付けられているところを見ると、本物のようだった。大きめのベッドが二つ堂々と鎮座しており、入った瞬間にこの部屋はいい部屋だと思わせるには十分な設備だった。

朝食はビュッフェタイプで、卵料理はどういうったものがいいかとあらかじめ聞かれた。我々は無難にオムレツをお願いした。

初めて見る野菜を食べてみようと思うのは、外国にいる高揚感がもたらしたもののような気がする。それを実際に口にしてみるとアロエのようにパリっとはじけた。世の中には知らないもので溢れている。


今日はバスツアーを予約しており、朝ご飯を食べ終えると集合場所の駅へと足早に向かった。

黄色いポロシャツを着た中年のツアーガイドさんはサイファーと名乗った。髪型は角刈りで、失礼ながら性別がよくわからなかった。

全部で13グループ参加しており、我々はグループ9だった。

バスに乗り込むと、日本人は固まって座ってくれと言われた。英語を理解しない人種だと思われているらしく、個別に色々話しかけるのが面倒だからであろう。

欧米人はいなかったけど実に多国籍なメンバーだった。


我々を乗せたバスはひた走り、最初の目的地である中社フラワーパークへと向かった。

バスを降りるともわっとした空気が漂い、肌をじっとりと湿らせた。不快度がマックスになったらしい理子は口がとんがっている。実にわかりやすい子である。

ガイドのサイファーは、何分後の何時何分にここに集合してください、絶対に遅れないようにと念を押した。


いろいろな花がいろいろなオブジェとともに構成されていて、映えスポットということらしい。ピアノを模した置物や、ドラムセットが置かれたりしている。子供たちは花々を見ても、大きな感動を見せないようだった。大人の方が楽しんでいたかもしれない。

いろいろな場所を見て回ると、同じツアーにいた男性がなにやら女性の前でひざまづいていた。

「ん?もしかして・・・」

男性の手元には指輪が収められているであろうケースがあった。

「サプライズだー!」と一気にテンションが上がる我ら夫婦と理子。

これからバスツアーで1日行動を共にする人にサプライズでプロポーズするなんて、よほど確信がないとできないであろう。

どうやら女性はそのプロポースを受け入れたらしい。たまたま同じツアーに参加しているだけではあるけど、大きな拍手を送った。


その後、暑さもあって早々に集合場所へと向かった。売店で押しの強いおじさんにお茶を買わされる。奥でお茶を飲んでるカップルに「あーあ、買わされてるよ」といった顔をされた。

集合時間になり、ガイドのサイファーもやってきて、ツアーのメンバーを確認し始めた。しかしグループ10は現れなかった。早速イライラしている様子であった。

ルールを守っているメンバーたちはバスに乗り込んで、グループ10が現れるのを待った。

そしてしばらくしてから彼らはやってきた。プロポースをしていたグループだった。

そしてサイファーは「きみたちは他のメンバーの時間も使っているんだ」と注意をした。

「残っててもいいけれど、私が迎えにくるのは3日後だ」とジョークを交えていた。そういったサイファーのジョークはバスの中を楽しい雰囲気にさせていた。

きちんと的確に注意しているんだけど、しらけた空気を作らないというのはものすごく力量のいることだと思う。

僕は単語しか聞き取れないので、Googleの翻訳アプリを膝下においてリアルタイムにアナウンスを日本語に訳していた。


その後宮原眼科という場所へと向かった。ここはもともと日本人が建てた本当に眼科として経営されていた場所らしい。そこは今ではハリーポッターに出てきそうな本棚で埋め尽くされた空間とのこと。

現地に到着し、バスを降りる前にまたサイファーはみんなに告げた。

「リメンバー・・・」絶対に集合時間を忘れるなよということである。

この後も目的地に到着する時にはサイファーは繰り返してこの言葉を言った。


チキンの店で昼食を食べ、有名らしいアイスクリーム屋へと行ったのだけど超満員だった。

その後、宮原眼科に入ってみると確かに天井まで届きそうな本棚。クラシックなのにモダンな空間だった。今ではそこはお菓子が売っていたり、アイスが売っている。ここでも人でごった返しており何も買うことができなかった。

結局その建物のすぐ前を流れている川辺で時間を潰すことにした。他のグループのメンバーも同じように過ごしていた。

川には魚が生息していて、子供たちはその辺にあった葉っぱをちぎって魚にあげていた。

自然が近くにあってそこで過ごせるというのはやはり落ち着くものだった。


集合時間になったのでバスに戻る。サイファーによる点呼があり、順番に番号を言っていき、グループ10と告げると

「Woohoooo!」と元気いっぱい返事をしていた。どうやら彼らはフィリピーナらしいがバスの中が笑いに包まれたのは言うまでもない。

その後オペラハウスを見学したり、レインボービレッジという村に行ったりした。

この村では願い事を書く場所があり、我々もそれぞれがもらった紙に書いていた。

また家族で旅行に来れますように


最後の目的地は高美湿地というウユニ塩湖のような鏡面になる場所だった。

風がとても強く吹いており、風力発電がそこらにあった。僕らは髪をもみくちゃにされながら移動した。

桟橋は1キロ近くあるらしく、その脇には小さなカニがたくさん生息していた。

どういうわけかその蟹の色は白く、片方の手がその体に対しておかしいくらいとても大きかった。天敵に狙われ放題に見える。


注意をまともに聞いてなかった人たちの帽子が桟橋の向こうに飛ばされていてアディダスの帽子に哀愁が漂っていた。


桟橋の先端からは靴を脱いで浅瀬の中に入っていけるようだった。僕らはそこから先へは行かなかったけど、なんともその光景は不思議だった。

本来は太陽が沈む姿を見ることができるらしいけど、この日はあいにく拝むことはできなかった。

こうして最後の目的地を堪能してツアーは終了した。

帰り道は2時間近くかかりながら、朝集合した駅に戻った。

サイファーが最後のまとめのような挨拶をしていたのだけど、どうやら日本人の他のグループの女性が明日誕生日らしい。

サイファーが盛り上げてみんなで「ハッピバースデートゥーユー!」と歌った。こんなにいろいろな人種たちが集まった空間で歌ったことなど人生でなかった。プロポーズの現場を目撃したり、誕生日を祝ったりと、素敵なツアーだったなと思った。


電車に乗ってホテルまで戻ったのはすでに22時近かった。

夕飯を食べていなかったので、ホテル近くにあった屋台で食べた。

コンビニで買ったビールを飲みながら、名前の思い出せないようなそれを食べているのは、旅をしてるなぁと実感させるには十分だった。花さんはとてもリラックスして楽しんでいる表情をしていた。

夜中なのに力強い街。それが台湾の魅力の一つなのかもしれない。




0 件のコメント: