2021年6月28日月曜日

もう大丈夫だよ

 小学生の時間は大人に比べて実に濃くて、意味を持っていると思うわけである。

理子が小学校へ行くためには僕が付き添い、同じマンションに住む年上のお兄さんと待ち合わせて学校まで行っている。

そして道中にある同級生の家の前で待ち合わせしていくことが多い。そしてその数人のクルーが学校に着く途中で空中分解したとしても僕が正門まで見送るというルーティンには変わりなかった。

しかしである、一年生の1日1日というのは、大人が思っているよりも実に濃いものであるから、昨日までの対人関係とは全く違うわけである。

ある日の朝。大きな道路を渡る手前のT字路で、友達を見つける。

「!あ!○○ちゃん!!」

それまで僕が持っていた理子の保険バッグを彼女は奪う。さもいままでも自分が持っていたと言わんばかりである。

その女の子はどうやらよく会話に出てくる子で、そちらにも付き添いのママがいた。

大人同士は、「これは二人で行ってくれるやつだ」と心の中で小躍りする。単純に手間が省けるからというよりも、楽しんで学校に行ってくれるその表情が嬉しい。

もう僕が後ろにいることなんて忘れているかのように、振り返ることなどしない理子。

さっきまではランドセルが重いことを、ありったけの力でとんがらせていた唇で表現していたのだけど、もう口角が上がりまくりで会話を楽しんでいる。

これからも理子から「もう大丈夫だよ」って言われることが増えるんだろう。それは成長の証ではあるのだけど、僕はちょっと寂しいと感じてしまうのかもしれない。

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