「妻が実家に帰りましてね」
「それは大変でしたね、何があったんですか?」となりそうなフレーズである。
上野駅まで3人を見送り、改札を抜けて姿が見えなくなるまでそこに留まったのだけど、あっという間に群衆の中に彼女たちは消えていった。
東北新幹線は予約席だから確実に座れるのだけど、3ヶ月の子と4歳児の組み合わせは、快適な旅が約束されたものとは程遠いことが予想された。どうか無事にと願い、そこを去った。
せっかく上野まで来たから、「デュシャン」を見に行った。フィラデルフィア美術館にある彼の作品群が日本にやってきたようだ。混んでいることもなく、一通りみて、また入り口まで戻って2周見た。展示物の写真撮影が可能だったため、いたるところでパシャ、とiPhoneの音がする。僕も何枚か撮った。
その後、久々に上野を散策し、スカイザバスハウスに行った。天気はとてもよく、着ていた上着はずっと手で持っていた。
アメ横に行くと、中田商店に行った。古本屋を探して覗いたり、気ままに歩いた。
土曜日はそんな風にして終わった。
日曜は部屋の掃除をして、ギャラリーを見て歩き回り、NIKKIで髪を切った。
「誰かと飲んできたら?」と花さんはいったのだけど、普段から誰かを誘って飲みに行くなど滅多にしない僕は、結局のところ、仕事が終わると神保町に行って古本屋を漁ったりしただけだった。
一人になったからといって、いつもとは違うことをするのは少し難しい。
妻と子供がいなくて羽を伸ばせる、という人もいるのだろうけど、そんなことを感じたのは風呂に入っている時と布団の中で理子に寝返りの裏拳チョップを食らわずに寝続けることができた、というくらいだ。
そういったわけで、水曜に彼女たちが帰ってきたときはとても安心した。ようやく日常が戻ってきた。話し相手がいない朝ごはんはとても寂しいし、時間に余裕があるくせに、遅刻をしてしまった。弛緩しているのである。
やっぱり4人で我々なのである。