2017年12月2日土曜日

韓国旅行 2日目 子供天国編

子供服市場で大量の狩りをし、大荷物を携えて昼食を摂ることにした。
しおりによると、どうやらうどんを食べることになっているらしい。お店の場所を花さんはあっという間に見つけることができる。ここはあなたの地元なのでしょうか。
メニューは3-4種類くらいだったと思う。選ぶ余地などない。あれか、これか、それである。だから、注文してから調理されたものが我々のテーブルに運ばれてくるまでの時間はあっという間だった。さながら吉野家である。もちろんキッズ用のメニューなどないので我々が食しているものを理子に取り分けて食べる。
しかし理子の口は、一見さんお断り、京都の老舗のようである。なかなかうどんを口に運ぼうとしない。
「ほら、いつものちゅるちゅるだよ。おいしいよ。お肉も、ほら!入ってるし。」
「パパもママも美味しそうに食べてるよ!ほらほら理子も食べたくなってきたでしょ」
我々のくどきをまったく耳に入れようとしない。都合のいい耳だ。
「理子ちゃん食べない!」と先日どこかで聞いたようなセリフがリフレインする。
「じゃあいいよ。」と僕は言う。押してだめなら引いてみる。
しばらく理子はぐずぐずとしていたが、何がきっかけだったのか分からないけれど、取り分けられたうどんをちゅるちゅると吸い始めた。
そういうものなのである。

『あっという間に料理が運ばれてくる』ということと『すでに調理されている』ということは限りなくニアイコールだと思われるのだけど、このうどんにおいては、イコールといってよい。ほとんど伸びているといっても過言ではなかった。
というわけで、理子に取り分けたはずがまだまだ麺は減らない。結局のところ僕は完食出来なかった。

周りを見渡すと、日本人だらけである。そして、なんのガイドブックに書いてあったのか分からないけれど、めんつゆを持参している輩がいて、さらにはそれをテーブルの上に堂々と置いていた。旅先では許されると思ってるのか知らないけれど、こういうのを見ると日本人も民度が低いんだなと思わざるをえない。

店を出ると、近くのセブンイレブンで軽食を買う。この店はどういうわけか、入り口付近がゲームセンターのようになっていて、若者たちがダーツに興じていた。中には兵役中と思われる軍服を着た屈強そうな男もいた。
ゲームセンターの並びに、当たり前のように日本語表記のガチャガチャが置かれている。理子は「あ、がちゃがちゃだ!」「あー!」という。
旅先だし、いいか、と思いやることにする。
最近のガチャガチャは僕が子供の頃のように100円ではできない。たいてい300円程度を要する。でも300円は韓国ではお札で1000ウォン札3枚である。コインが必要なガチャガチャでどうやってお金を投下するのかしら、と思っていたらなんのことはない。500ウォンを6枚入れるのであった。コインの投下口にはその分の厚みがあった。力技である。


理子がガチャガチャに興じている頃、僕のお腹では予断を許さない状態が起きていた。辛いものを食べたせいで腹痛に見舞われていたのだ。そういったわけですぐさまホテルに戻った。一部ではトレットペーパーもトイレに流してよいけれど、たいていはトイレの脇にあるバケツに使用済みティッシュは入れることになっている。


しばらくホテルの部屋で休むことにする。花さんは戦利品をベッドの上に広げて満足そうにしている。そして「ワンシーズンに一度は買い出しに来たい」という発言をする。
要は年に4回である。ふむ。もはやバイヤー花である。

理子の聖書による読み聞かせが何度か繰り返された頃、また出かけることにする。
ザハハディドが設計した、巨大な繭のようなデザインプラザに行く。前回来た時も感動したのだけど、今回もまた然りであった。地震大国の日本では建築不可能なんだろうけど、都心部のど真ん中にこういうパワフルな建物を造ってしまうところは韓国のすごいところだと思う。
この中に、子供が楽しめる遊び場があるとのことだった。花さんが思っていたのとは違ったようなのだけど、ここはかなり良かった。日本で言うところのボーネルンドのキドキド巨大版といったところか。
この日は金曜日だったことと、閉園の1時間前ということもあって、人があまりいなかった。そういうわけでかなり伸び伸びと遊んだ。デザインプラザという場所柄、遊具も洗練されている。楽しいのにスタイリッシュだった。そしてデジタルもうまく使っているし、木製のかわいいおもちゃもあるし、とにかく子供だったら2日間いても飽きないのではないだろうかと思われる。
高さのある遊具や場所には数人のスタッフがついていて、子供たちが危なそうなことをすると注意をする。そういった気配りが大人たちを安心させてくれる。
そしてここのいいところは、大人たちが休める場所がきちんとあるということだった。基本的に巨大な一つの部屋なのだけど、周囲を見渡せるところに無印良品の廃人ソファのようなものがあった。pollimolliというメーカーの、このクッションのよいところは廃人一歩手前をキープできるように背もたれがあることだった。そしてデザインプラザにあるというだけあって、デザイン性もあり、テキトーに置いてるわけではなく、適当であった。喫茶スペースには様々な洒落た椅子が置かれていた。手を抜いたところがない。

花さんと僕と交代で廃人ソファのお世話になった。理子はどこまでもパワフルに遊び続ける。平日の夕方17時頃にこの場所にいるのはどうやらブルジョアの部類の人のようだった。シャネルのバッグを持ってるような人種だ。
中には日本人の女の子もいた。日本語を話してたので、話しかけてみると「明日東京に帰るの」と言っていた。
閉園までみっちりと遊んで外に出た。もうすっかりと暗くなり、イルミネーションが目に眩しい。デザインプラザの敷地内には LEDの薔薇がやはり光乱れていた。

いたるところにクリスマスツリーが飾られ、巨大で技巧を凝らしたものが多かった。僕らはそんな光の洪水のような喧騒の中を抜け、ホテルの最寄の石焼ビビンバの店に入った。店先には日本語の看板で呼び込みをしている虚無僧のような老人がいた。まだまだ韓国においては日本人旅行者が多いようだった。
2階の席に案内されると、ハングル文字よりも大きく書かれた日本語メニューの張り紙に思わず笑ってしまう。
石焼ビビンバと汁物とビールを発注する。失敗したなと思ったのは理子用に辛くないものを頼まなかったことだ。
「理子ちゃん辛いの食べない」
ごもっともである。

後ろのテーブルにはヨーロッパ圏と思われるカップルの姿があった。器用に箸を使って食べている。去年はこういう姿をほとんど見なかった。平昌オリンピックを前に欧米人も来韓(こういう言葉があるのか知らないけれど)しているのかもしれない。

店を出ると、虚無僧はやはり静かに呼び込みをし続けていた。まるで修行のようだ。
少し街中を歩いてみると、巨大なクリスマスツリーとクラシックな建物にプロジェクションマッピングが行われていた。その時ばかりは足を止めて、寒さも忘れて3人で見入っていた。まだまだ眠らないこの街は、僕たちがその場を離れた後もずっとイルミネーションで街を彩って、人々の足を止めて、帰路につく人の心を温めているに違いない。


2日目の夜が更けていく。

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