あなたの趣味はなんですか?と尋ねられた時に、
「そうですね、音楽鑑賞です」というほど、音楽業界にペイしていないし、youtubeやsoundcloudで済ませてしまっている。
「そうですね、カメラです」というほど、レンズを買ったり、最新機種の情報を集めたりなど、のめり込んでアディクトしているわけでもない。
「そうですね、読書です」というほど、毎月の読書量は多くない。月にせいぜい2.3冊である。
あえて言うとしたら、それは「BOOK OFFで埋もれてしまっている良い本を掘り起こすこと」かもしれない。
職場が白金台だった頃、その街にあるBOOK OFFは、高級住宅地にあるからなのか、売られている本がすごかった。
richard avedon, nick night, helmut newton, robert mapplethorpe, egon schiele, 荒木経惟 etc.
僕はそれらを根こそぎ買って、ことあるごとに店に訪れた。
そういったアート系の本が欲しいのであれば、神保町などに専門店がたくさんあるではないか、と思うかもしれないのだけど、僕としては「まさかこんなところにあるわけないよね」という棚の中から、見つけ出したいのである。
それに、アート系専門店では、適正な値段が付けられているが、BOOK OFFの場合はそうでないことが多い。どれもこれも1〜3000円で売られていることが多い。
背表紙に「newzealand」などと配されたよくわからない本の隣に納められた「NICK NIGHT」の文字面からは「ここから救い出してくれ」という声が僕には聞こえるのである。
白金台という街に古本屋というのが合わなかったのか、それとも単純にBOOK OFFの景気が悪いのか知らないけれど、ある時残念ながら閉店してしまった。
それから僕は、中目黒のBOOK OFFに通うこととした。いわゆるオシャレな街として君臨し、感度の高い人々が居住しているということもあってか、ここもなかなかの品揃えだった。そして、少し品揃えがコアだった。僕はここで古屋誠一、antonio lopez, helmut newtonの写真集やら作品集を買った。
しかし、ここのBOOK OFFも閉店してしまった。
僕の通うところはもはや、死神よろしく閉店していく。
五反田のBOOK OFFにもしばらく通い、ブレッソンの写真集やらを買ったりしていたのだけど、この店はどういったわけか、古着販売を始めてしまい、本のスペースが奪われてしまった。
最終的には渋谷店に行き着く。アートコーナーはそんなに広くはないのだけど、1、2ヶ月に一度行くと、なにかしら売っているので定期的に通っている。
この店は、そもそも古着を売っているスペースが地下にあるので、本の売り場を縮小することはありえないと思われる。
僕の生活圏の、あるBOOK OFFではつい最近とんでもないものを見つけてしまった。
一度ふらっと入ってみたときに、ジュリアンオピーの作品集が安価で売っていたので、なにかしら期待させるものがあった。
そして、先日、また所用帰りにふらっと寄ってみると、hedi slimaneのberlin 7Lという本を見つけた。ハードカバーでケースに入ったそれには値段が貼られておらず、本自体に記載されているのかと思って中を見ても値段は分からなかった。そこで店員に聞いてみると、新人だったのか奥に引っ込んで先輩に聞きに行っているようだった。
戻ってきた彼からは「700円です」と告げられる。
僕は返事として「わかりました、ありがとうございます」と言ったのだけど、内心は「嘘だろ?」ととても興奮していた。
そもそもなんでこの本をBOOK OFFに売ったのか、元持ち主にも聞きたいところではある。
僕はその本を誰にも渡すまじと両手に抱え、しばらくその付近をうろうろし、洋書コーナーに行くと、ansel adamsを見つけてしまう。
恐る恐る表4を見ると「500円」のシールが貼られていた。ソフトカバーでうす汚れてはいるのだけど、アンセルアダムスが500円はないだろう。
僕はそれをやはり大事に抱え、レジに行く。この大御所2名の本が2冊で1200円とはとても信じられないのだけど、それに加え、僕は渋谷店で発券された100円引き券を持っていた。
ただでさえ安いのに、さらに値引きして買おうとする僕も僕ではあるのだけど、その券は発券された店でしか使用できないらしかった。
とはいえ1200円である。
意気揚々と帰宅し、スリマン先生の本を調べてみると、かなり高額で取り扱われている本のようだった。
物の価値を知らぬというのは恐ろしい。
とはいえ、興味のない人にとってはただの本だし、ミニマムな暮らしを提唱するような世の中ではなおさら不要なものなのかもしれない。
でもまたしばらくしたら、手を後ろに組みながら、棚をじーっと眺めることになるんだろう。なにせそれがどうやら僕の「趣味」のようだからである。
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