2017年2月26日日曜日

台湾旅行記

なんとなく、台湾に行ってみたいという気持ちが僕の中にはずっとあった。
花さんに「どこか行ってみたいところはある?」と聞かれた時、「台湾、かな」と答えたりもした。そして花さんはその言葉を忘れることなく、情報収集し、ブックマークやら旅本を買ったりして蓄積されて、見事に2月16日に家族旅行という形で実行された。

数日前には完成していた旅のしおりによると、彼女は羽田空港行きのタクシーを手配していた。それは定額制になっており、メーター料金とは関係ない。
朝9時に自宅マンション前にタクシーは横付けされていて、運転手のおじさんは我々に深々とお辞儀をして挨拶をした。
3人分の荷物が入ったノースフェイスのバッグとベビーカーをトランクに入れ、車内に乗り込んだ。出発日の直前まで、ベビーカーの有無は議論されたのだけど、振り返ってみると、ベビーカー無しでの旅は考えられないほど助かることになる。
運転手はまず、我々に道順を確認し、三軒茶屋から高速に乗ることになった。用賀から乗るのは混むからだ。とはいえ、結果としては三軒茶屋から乗ったとしても混んでいた。
道中では、孫がいるという運転手が、親孝行とは何か、それの尊さを我々に説いており、
また、高架化された道からわずかに溢れる光が、車内を暖めていた。
リムジンバスの時よりも、体感的には早く空港に着くことができた。運転手に礼を言って空港へと入り、まずは銀行ATMで日本円のまとまった額をおろした。

スマホを操作しての発券など、もはや珍しいことではなくなった。花さんはiPhoneを巧みに使って、所定の機械で3人分のチケットを受け取ると、早々にチェックインカウンターに向かった。
ここで前回の韓国旅行を思い出さずにはいられなかった。「あの時、花さんは、チケット会社の外国人相手に英会話していたな」「あぁ、難しい顔をしている、うまくいってないんだな」などと花さんから遠く離れたところで理子をあやしながら思っていたことを、つい昨日のことのように振り返っていた。
「今回は何度も確認した」と花さんが言った通り、まさに滞りなく手続きを終了し、バッグとベビーカーはベルトコンベヤーに乗せられていった。
レンタル手続きをしていた(もちろん花さんが)WiFi機器を受け取り、そうそうに搭乗手続きをした。そしてキッズスペースで理子を遊ばせることにした。言うまでもなく飛行機の中で寝ていただくための作戦である。
行き交う人々はみなどこか海外へ行く人たちなのだな、と思うと感慨深い。空港という場所はやはり面白く興味深い場所だ。

搭乗時刻が近づいてきたので、ゲートに並んだ。理子は飛行機をみると「ひこうきー!おっきいねぇ」と叫んだ。この前空港に来た時は「ひこうき」という言葉だけしか言えなかったのに、思ったことを多少なりとも言えるようになっていた。

そして我々は飛行機へと乗り込んだ。手荷物は頭上の棚には入れないで足元に置いた。理子をあやすためのものは手元に置いておかねばならない。
子どもを椅子に座らせシートベルトを装着する、というのはかなり至難の技となるのだけど、御多分に洩れず理子もおとなしく座るわけがなかった。アシアナ航空のときはCAから注意を受けたのだけど、ANAはそこは大目に見てくれているようで、親が確実に抱っこしていれば問題ないということだった。

定刻通り大きな機体は動き出し、加速とともにそれは宙に浮かび、幾たびかの方向転換をして無事に台湾へと向かって飛び出した。
理子に至っては、どういうわけか、花さんの腕の中でそのまま寝てしまった。こんなスムーズな展開などだれが想像しただろう?しかし花さんは「飛立つ瞬間って眠くなるのよね。気持ち分かるわ」と言って2歳半の娘にいたく共感しているのであった。



台湾に着くと、そこは日本でいうところの5月や6月くらいの気候のように感じられた。ようは暑いわけである。なにせ僕は上着を着て、さらにはニットまで着ているのだ。すぐさま上着を脱いだことは言うまでもない。
理子は久々に歩き回ることができるのが嬉しいようで、かなりはしゃいでいる。天井から吊りさがった蝶々の飾りを見て「ちょーちょさん、いっぱいだね!」と言った。

いたるところが漢字のみで説明が書かれており、中国圏に来たのだな、とぼんやりと思った。写真を撮られたり指紋を調べられたりして入国手続きを無事に終え、荷物を受け取ると、空港内にある両替所で2万円分を両替した。
そしてタクシーに乗って予約しているホテルへと向かった。どうやってコミュニケーションを取ったのかといえば筆談である。事前にメモ帳を用意していた花さんはホテル名を(漢字のみ)運転手に見せると「わかったわかった(多分)」と運転手は言った。
とても驚いたことの一つなのだけど空港は市街地の中にある。着陸するとき、すごく異様に感じた。騒音がひどいから、広い敷地が必要だから、いくつもあるであろう理由から市街地から離れた場所に空港はあるものだと思っていたけど、台湾に至っては市街地のど真ん中であった。
我々の泊まるホテルはそんな空港から20分ほど離れたところだったのだけど、運転手は運転しながらポケモンをやっていた。日本語を理解しない人だったようで、僕が小言を言ってもまったく関係ないといった風で順調になにかしらのキャラクターをゲットしていた。大きな道路で車通りが激しめな場所でも彼はスマフォを操作して、運転しながらポケモンしているというよりかはポケモンしながら仕方がなく運転している、と言ったふうだった。
しまいには我々が求めたホテルではないところで降ろされた。ここではないのでは?と抗議するものの「ここだ、大丈夫だ」と言って降ろされた。
いい加減な人がいるものである。年間を通して暖かいから色々とゆるいのかもしれない。

地図を片手に5分ほど歩くと、本来タクシーが我々を届けるはずだったホテルへと到着した。首元に音符のタトゥーを入れているホテルマンは、日本語を理解しており、理子を「かわいい!」と言って褒めちぎった。

室内はベッドも広くモダンな造りだった。荷物を降ろして少し休むことになった。
窓の外には大きな通りがあり、けたましく走る原付の集団が見える。
「あぁアジアに来たんだな」
僕はそんなことで、外国にいることをようやく実感するのであった。



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