2014年10月5日日曜日

笑顔



理子さんが生まれてから早くも44日が経った。
生まれた当初、おっかなびっくり理子さんを抱いていた僕の手つきも、
少しずつ慣れたものになってきた。

昨日、花さんから添付付きのメールが届いた。
開いてみると今まで見た事のないくらい笑顔の理子さんの写真があった。
とてもナチュラルに、母に対して見せた完全な信頼を寄せた目だった。
それを見た時とても嬉しく感じたの同時に、ほんの少しの嫉妬も覚えた。
四六時中、自分の睡眠や食事を削ってまで世話をしている花さんに対して覚えるのは
お門違いにもほどがあるのだけど。


そして、今日。土曜日は休みである。
僕は理子さんへの積極的な介入を試みる。
泣けばすぐに駆けつけご機嫌をとり、抱っこをする。
泣き止まないときはレディに失礼ながら
服の隙間からおむつの黄色いラインをリトマス試験紙よろしくチェックする。
青いラインに変色しているのを見つけるや否や、
僕の右手は新しいおむつへとむかい、
左は軽やかにウェットティッシュへとむかう。
そして両足を左手で持ちあげ、右手でおむつをおしりへ滑り込ませる。
すばやくおしりを拭き終えると、腰回りの湿気を少し取り除き
おむつのマジックテープを締め付ける。
弱くても、強すぎてもダメだ。

今まで新生児サイズを使用していたのだけど、
ここのところの理子さんの爆発的な成長によって、
かなりおむつがきつくなってきていた。
単純な見た目だけではなく、こういったところでも成長がかいま見られた。

僕がいくらご機嫌をとっても、おむつを変えても、
『歌えバンバン』の理子さんバージョンの替え歌を即興で歌い上げても、
泣き止まないときがある。
そんなとき、僕はあきらめて花さんに理子さんを渡すと
ピタっと泣き止むのである。
もう、僕は母には勝てないのである。
だから、僕は悟ったのだ。
もちろん最大級の愛情を持って理子さんに捧げるけれど、
花さんへも、変わらず最大級の愛とケアを持って接するのだ、と。

そんなことを考えながらも理子さんをあやしていると、
彼女はとても優しく僕に微笑みかけたのである。
新生児の笑顔は、医学的には反射のようなもので、
特段意味がある訳ではないとしても、
僕にとっては強烈にこみ上げてくるものがあり、僕は自然と涙を流していた。
嬉しいとか、喜ぶとかそういった感情ではない、説明のつかない涙だった。
おそらく、とても幸せを感じたんだと思う。

理子さん以外の泣き声に気づいた花さんは、
僕が涙を流しているのを見てびっくりしていたけれど、
「男にだってマタニティブルーはあるよね」と言って笑った。

僕はいまきっと幸せなんだ。

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