2014年8月15日金曜日

the other side

平日の朝である。
私は隣にいる眠り人を起こさないようにそっとベッドを出る。
朝はいつもラジオを聞いている。
下世話な話などを流さず、音楽のみを流す番組である。
朝から情報が多いのは嫌いだ。

トーストにチョコレートクリームを塗って、オーブントースターでこんがりと焼く。
マグカップにインスタントコーヒーを入れて、ウォーターサーバーでお湯を入れる。
朝から夏の暑さでうんざりしてしまうがコーヒーはホットを飲むようにしている。
しばらくすると、上階から足音が聞こえた。階段を下りてくようだった。
「おはよう」寝ぼけ眼で彼は言う。目には目やにがまだついている。
あくびをしながら、少し深めの皿にコーンフレーク、豆乳コーヒーを入れて混ぜる。
最近のお気に入りの組み合わせのようだ。
彼はそれをあっという間に平らげると、キッチンのシンクにそれをおき、水で軽く流している。

私は鉢植えに水をやりながら歯を磨く。
新しい芽が次々と顔を出し、鉢植えから溢れんばかりだ。
10時になると、ラジオのDJは違う人へと変わる。
彼も家を出る時間だ。
「行ってくるね」彼は言う。
「今日は燃えるゴミの日だから、ゴミ箱を出してくれる?」
私はそう言うと、
「それじゃあ変わりに自転車を押してね」と彼は言った。

玄関の外に置かれたゴミ箱を彼が運び、彼の自転車を私が押して外に出る。
それじゃあ今度こそ
「行ってきます」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
彼は自転車を漕ぎ出し、振り返って手を挙げた。
そして、もう一度、角を曲がる前にこちらを見て手を振り、やがて姿は見えなくなった。

一人になった部屋で、今日一日のことを考える。
天気がいいのでスニーカーを洗うことにした。
バケツいっぱいに水をはり、すこし洗剤を混ぜてタワシでゴシゴシと洗う。
白いスニーカーの汚れはみるみるうちに落ちていく。
蝉の鳴き声とラジオから流れる心地よい音色。
首筋を伝う汗もどこか気持ちいいものにすら感じてしまう。
私の靴と、彼の靴。大きさがまるで違うそれらがテラスに仲良く並び、
太陽の光を浴びている。

時計を見ると、まだ12時を過ぎた頃だった。
彼が戻ってくるまではあと何時間もある。
あと半日、私は何をしよう。
エアコンをつけた部屋の、大きなソファに横になって考える。
カーテン越しに入る夏の日差し。蝉の鳴き声。

私の一日はまだ始まったばかりだ。

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