カメラマン・ベティが言った。
「すぐるさんちの、この白い壁いいっすねぇ、今度ここでアー写撮らせてもらえませんか?」
先週相変わらずのメンツで飲んでいるときの会話だ。
22日の金曜日、一本の電話が入った。
「ベティですけど明日大丈夫ですか?」と。
「ま、まじだったのか!」
翌日の土曜日14時に予定されたアー写の撮影は17時に変更になり
なんとなく手持ち無沙汰になってしまった僕は、
ツタヤで借りていた「色即ぜねれーしょん」を見る事にした。
ミルク多めのコーヒーを入れて、飲みながら1時間くらいが経った頃
「ドンドンドン」と少し控えめなノックが聞こえた。
サングラスをしたベティが現れた。
そしてバンドのメンバーを迎えに行くと言ってまた外に出て行った。
以前、リリーフランキー氏のなにかの本に書いてあった話を思い出した。
(誰も知らない名言集か美女と野球だと思う)
AV女優の写真撮影に、リリー氏の部屋がスタジオとして使われ、
BGM何かかけて下さいとお願いされたリリー氏が
どんな曲をかければいいのか困って悶絶したという。
この話を思い出してしまった僕も悶絶してしまった。
バンドのメンバーがどんな人か分からないから、とりあえずこのまま
青春系色即じぇねれーしょんだ!
果たしてバンドのメンバーは現れた。
なんだかいい人たちそうだ。
さっそくベティは機材をセットしにかかった。
ちゃぶ台に載せられたiBook。ペンタブ。
カメラにiBookをセットしてすぐにチェックできるようにしている。
なんだか本当に簡易的なスタジオになっていった。
マスキングテープみたいなもので立ち位置に印をつけ撮影が始まった。
家主の僕は、iTunesをいじる事にした。
ametsubがいいのかー?
それともaphex twinか。スタジオっぽくジャズトロか?
しかしながらとくに音楽に左右される事無く淡々と撮影は進んで行った。
なので僕はシャッフル機能に丸投げした。
スーパーカーの後にsoulwaxだ。そのあとは山下達郎だ。
バンドのメンバーの一人が、この電気カーペットいいですね、と言った。
僕は初対面の人たちが交わすであろうなんてことない会話をはじめる事にした。
今日は暖かいですねぇ。
ベティ君とはいつぐらいからの付き合いなんですかぁ?
この家換気扇がないんですよ、ぐふ
「次いきまーす」
「はいっ」
『you are best for me』
「いいですね」
『oh! honey』
「体はそのままで、首だけ右に動かして下さい、右です、右、いや首だけです、そう」
時折、ベティの声と山下達郎がシンクロした。
かくして、撮影は無事に終了した。
バンドのメンバーは帰り、ベティは残った。
そしてレタッチを始め、しばらく時が経った頃マシオ先輩がビールを持ってやって来た。
先週みたいな今日が始まった瞬間だった。
そしてpillowsだったり重低音がバクチクしたり、未来は俺らの手の中だったり
新手のティッシュだったり、音楽界を縦横無尽に渡るyoutube大会が始まった。
12時を過ぎて彼らは帰った。
僕は二つの窓を全開にあけて、煙草の煙を外においやった。
外ではかすかにオリオン座が見えた。
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