2018年11月19日月曜日

表参道

「世界で一番美しいのは誰?」と、隣で寝ている理子が寝言を言った。僕はその時もう起きていて、iPhoneを見ていた。
あまりにクリアに言うものだから、起きたのかな?とも思ったけれど、その後に続く言葉が出てこなかったし、まだ目を瞑っているから、それは完全に寝言であるらしかった。
最初何を言っているのかわからなかったけど、すぐに「鏡よ鏡に続くのね」と理解した。しかし娘よ、よりによって白雪姫ではなくなぜ「お妃さま」のほうなんだ?

11月には花さんの誕生日があり、果たしてなにを送ろうかと考えあぐねていた。先日2017年版の花ブックをようやく上梓することができ、長い2017年を終わらせたばかりだ。
花ブックとプレゼントは別物なので、なにかしらを送るつもりでいたのだけど、何がいいかしら?と3ヶ月前くらいから悩み続けていたのであった。
そういう状況であることを黙っていられないので、つい花さんに「誕生日プレゼントのことなんだけど」と話してしまう。
見当違いのものをあげてしまうことほど虚しいことはないし、使われないまま仕舞われてしまった時は目も当てられない。
しかし花さんというのは「プラダのバッグが欲しい」とかいうような女性ではないのであった。

結局の所、普段の生活を見ていて、リュック難民であることに検討をつけ、「リュックはどう?」と聞くと、それがいいということになった。
少し前、エルベシャプリエのカーキ色のリュックを、花さんはよく使っていたのだけど、二子玉によく行く我々の行動範囲内で、それを使っている人が本当に数多く存在していた。
理子の成長とともにお出かけの際の荷物が減っていったこともあり、リュックは使わなくなっていったのだけど、玲さんの誕生とともにやはりリュックが便利であった。

そうして私はギャルソンのリュックを提案した。リュックのサイズ感は背負ってみないとわからないから、今度の週末にお店に行ってみようと言って、実際に昨日、四半世紀ぶりに家族で表参道へと馳せ参じた。
玲さんがベビーカーに乗り、理子は歩くことになったが、しばらくすると抱っこしてと言う。
表参道に着くと、まずご飯を食べた。たまに行くオープンエアのコミューン2ndという屋台が並んだ場所。
僕はタイカレー、花さんはシーフードフライ。理子はポテトばかり食べるので、僕が食べ終わった後に、近くのコンビニで納豆巻きを買って食べた。
道中、理子はどんぐりを拾って、「誕生日プレゼントね」とママに渡すために僕のポケットにそっと忍ばせていた。

その後ギャルソンへ。一昔前だと子供を連れて店に入ることなどまったく想像の外の話であったけど、ツーリストで溢れた店内は我々が浮いて見えることなどなかった。
お目当のリュックをマイナーチェンジを繰り返して定期的に売られているものなので、当然置いてあった。
そうして花さんに背負ってもらうと、「ではこれを」という話にあいなった。
そんなやりとりをしていると、理子がどうしてもベビーカーに乗りたいというので、仕方なく理子と玲さんを入れ替えた。店内でこんなことをするなど思いもしなかったのだけど。

店を出てしばらくすると、理子は寝た。もはやそのベビーカーに対して体はとても大きく、窮屈に見えたのだけど、彼女にとって表参道など起きているに価値しない町なのであろう。
これを契機とまずは表参道ヒルズで玲さんケアをする。理子がまだ授乳を必要としていた際、よく訪れていた地下のスペースへ。そう思い返してみれば、理子がまだ小さい頃は表参道にもたまには来ていたのだなと思い返す。
玲さんは授乳の際、花さんの顔をじっと見ながら飲む。そうやって繋がっている。
だからなのか、ケープを使って隠しながらやると激しく抵抗するため、結局こういった授乳室の存在が欠かせない。

玲さんの空腹が満たされるとキャットストリートの「6」のお店へ行く。僕が「行ってみたほうがいいよ」と言い続けていたのがようやく果たされる。
花さんは目をキラキラさせている。よくよくラックを見ていると「おや?あれもこれもそれも花さんのクローゼットで見たことある」という程、ここのところ花さんの心をキャッチしているブランドである。
店内には花屋も併設していて、偽りのない花の香りが漂っていていい空間だった。

店を出るとニックナイトの展示が行われているthe massへ行く。ちょうど理子は眠りから目を覚ました。
ベビーカーを入り口で預かってもらい、中に入る。オープ二ングの時は人が多くいたから、今回はゆっくり見ることができた。理子に「どれが好き?」と聞くと、「ピンクの!」という。僕も同じ作品がいいと思っていたから嬉しかった。
東京に住んでいてよかったなと思うのは本物に触れることのできる環境が近くにあるということかな、と思う。

展示を見終わると、動線がイマイチな地下鉄を乗って家に帰る。
プレゼントに買ったリュックを「背負ってみたら?」と僕が言うと「誕生日まで待つよ、理子の誕生日の時にもそう言い聞かせたしね」という。

そんな彼女の誕生日は来週末である。  

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