仕事の性質が今までのデスクワークと全く異なったことと時同じくして、僕のビールの飲み方が変わった気がする。これまではビールを飲む時は一口ずつ、「ゴクッ!」と飲んでいたのだけど、ふと気がついたら、「ゴク、ゴクッ、ゴクッッ!!プハー!」となっていた。まさにビールのCMのようである。
労働した後のビールは最高だ。
デザインの仕事をしていた時は家でビールを飲むことは割と少なかった。これは帰宅時間があまりにも遅すぎてビールを飲む前に眠ってしまうから、ということも言えるのだけど、頭を使う仕事と体を使う仕事の違いであると思う。
11月23日、この日は公休希望を入れていたので、家族三人休みだった。24日は花さんの誕生日なのだ。
だから何か特別なことをしましょうと思って、紅葉を見に高尾山でも行こうかと家を出た。しかし天気はとても悪かった。予報でも曇りのち雨となっている。それに加え、大人の都合など関係なしに理子はベビーカーに乗ってくれずにいた。
花さんと目があって、「高尾山はやめとこうか?」と言ってみると、「私も同じことを考えていた」と言う。とりあえずお茶でもしながらどうするか考えようということになり、スタバでコーヒーをすすりながら話し合ったところ「普通にニコタマ」ということになり、いつもの休日の過ごし方をなぞることにしたのだった。
とはいうものの、僕は土日休みというわけではないし、ここのところ花さんの休日出勤が多かったので、いつもの休日の過ごし方と言ってもそれ自体が久しぶりだった。
電車に乗ってニコタマへ着いた時、アナウンスで「用賀」で人身事故が起きた、とアナウンスがあった。ついさっきまでいた駅のホームで人が死んだという事実は現実でありながら、どこか自分とは切り離された場所で起きたことのように聞こえた。
いつものニコタマに着くと、いつものように過ごした。結局使うことのなかったベビーカーを、駐車スペースに止め、
理子を公園で遊ばせる。いつの間にか遊べる遊具の種類が増えている。ちょっと前までは危なっかしくて遊ばせられなかったようなものでも、嬉々として遊んでいる様子を少しだけ離れた場所から僕は見ている。上着を嫌がって着ないまま薄着で理子は遊びまわっている。滑り台は「りこちゃんの」らしく、リピートボタンでも押したかの様に繰り返し同じルートで滑っている。ときにブレイクをいれて、つかまり棒にぶら下がっている。
それにも飽きると、今度は小山に登り、登りきったところで高さにびっくりして怖くなり「ママ~パパ~」泣き出す。
しばらくすると、同じ園の子と会う。普段と違うところで会ったためかきょとんとしている。親同士が世間話をする。
秋という季節はもう去ってしまったことを知らせる様な冷たい風が吹いている。川辺の公園だということもあるのかもしれない。併設された休憩所に入って理子を休ませる。
公園をあとにすると、ツタヤ書店に行く。自由に動き回る理子。公園で遊ばせることは即ち、疲れさせてベビーカーで寝て、親の時間を作るという目論見も多分に含まれているのだけど、理子には疲労の文字は全く見られない。ニコタマという場所柄、子供が多い本屋であるから同じ様な境遇の親子を見かける。
そうこうしているうちに、なんとかベビーカーに座ることに成功すると、先ほどまでの元気は何処へやら、すうっと入眠した。2歳の子供がいるとなかなか食べられないラーメンを食べることにする。列ができているけれど、どこの店に行ったって大抵同じ様に列ができている。そういう街なのである。だから僕たちもそこの列に加わる。
20分ほど並ぶと店内に案内される。そして理子は眠りから覚める。
テーブルは3人が座れる場所に通されたので、ベビーチェアを借りて理子を座らせたのだけど、お腹が減ったと言って騒ぐため、パンをこっそりとちぎって食べさせた。
列に並んでいる時にメニューを渡されて事前に注文していたため、スムーズに料理が届いた。キャラクターが描かれた子供用のお皿に麺を取り分けて理子に食べさせる。といってもフォークと手をうまく使って自分で食べている。まず手で麺をフォークに乗せて、それから食べる。そうしないことには先に進まないのだ。
随分と親は楽になったものだ。
僕は理子に麺を分けたため、替え玉をしたのだけど、理子ももっと麺をよこせ、という。立派な食欲だ。
食事を終えるとすぐさま退店する。外ではまだ長い列ができているのだ。
その後、少しウィンドウショッピングをしたのだけど、なかなかどうして理子が暴れまわり、床にひっくり返って泣きわめくという事案が発生したため、家に帰ることにした。
本当はあまり行くことのないような店で誕生日を祝おうとしていたのだけど、落ちついて食事をすることもできなそうだし、理子も落ち着いて過ごせる家で食べようということになり、食事をデリバリーして3人で静かにお祝いした。
結局家が一番落ち着くのである。なんといって理子の好きなアンパンマンがある。
3人でお風呂に入って布団を敷いて、理子を寝かしつける準備を花さんがしている間、僕は花さんへの誕生日プレゼントの入った小さな箱を理子に渡した。
「これはママへのプレゼントだから、ママのところへ持って行ってあげて」と言うと、どうやら理解したらしくニコニコ笑顔で「ママー」と言って花さんのいる部屋のほうまで走り出した。
さすがにまだプレゼントという言葉を言えなかったけど、「どうぞー」と言って理子は花さんにプレゼントを渡すことができた。
花さんは驚いた様子で、でも喜んでくれた。箱の中身は、以前ウィンドウショッピング中に花さんが「かわいい」と言っていたブランドのもので、熟考の末、指輪にした。イヤリングやネックレスは理子が小さなうちはなかなかつけることができないからだ。それに僕はまだ指輪をプレゼントしたことがなかった。
ハッピーバースデー花さん。
おかげでいいプレ誕生日を過ごせました。
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