三連休のうち、最後の日、僕は仕事に行くこととなっていた。
とあるショップの開店前の製作物を担当しており、その対応があったのだ。
iPhoneで会社のメールと同期しているので、クライアントからのメールが来たら出社することにしていた。
昼間は掃除をしたり、花さんと理子さんと過ごした。
しかしながら、待てども待てどもメールは来なかった。
15時頃になって、クライアントに電話をした。
すると、あと2時間くらいでメールを送ることができるというので、
それまで自宅待機することにした。
9月も半ばである。
夕方の太陽はすっかり元気をなくし、虫の音も蝉から鈴虫へと変わっていた。
17時には、理子さんをお風呂に入れることにしていた。
平日は花さんがしてくれているので、休みの日は僕が担当していた。
会社に行く前にお風呂に入れることにした。
赤ちゃんが全般的にそうなのか分からないけれど、
服を脱がせて真っ裸にさせるとすごく泣く。
だから、少し寝ぼけているくらいのタイミングでお風呂に入れ、
なにが起きているか分からないうち着替えまで済ませてしまいたい、
それが生後25日経って我々が行き着いたこの時点での答えだった。
果たして、この日の理子さんはすっかりと覚醒していた。
服を脱がせると、泣いた。
そして浴槽に足をつけると少しだけ泣いた。
しかし、体を全部浴槽のお湯につけ、ガーゼタオルをお腹にあててあげると
柔らかな表情をした。
何が起きているか理解はできないけれど、お湯につかるのは気持ちがいいようだ。
花さんのお腹の中にいるような気分なのであろう。
ガーゼで顔や髪の毛、腕、手、お腹、太もも、足、背中、おしり、性器。
順番に洗っていく。背中を洗うときに体の向きを変えるのが、
僕はまだおぼつかない手つきになってしまう。
そしてそんな半人前の僕の動きを察知して、理子さんは泣くのである。
慌てて体をもとの位置に戻すと、泣いた反動なのか、浴槽内で排便した。
お湯の中で漂う便。
とてもリラックスした様子の理子さん。
僕は理子さんを抱き上げると、花さんにお湯をかけてもらい、風呂場を脱出した。
体をタオルでふき、ベビーオイルを塗り、おむつ、服を着させる。
基本的に中腰であるから、体力のいる作業だ。
一通り終えると、僕は仕事に行った。
会社での作業は、それほど大変なものではなく、
スムーズに対応ができた。
21時に終わればよいかと思っていたのだけど、20時には帰ることができた。
僕は仕事が終わった時は、いつも花さんに電話をかけていたのだけど
理子さんが生まれてからはメールで連絡していた。
今まさに理子さんを寝かしつけたところかもしれないし、
また花さんも、合間を縫って寝たところかもしれない。
電話で邪魔をするのは嫌だった。
この日は直前までメールのやりとりをしていたこともあって、
久々に電話をかけることにした。
「仕事終わったよ、なにかスーパーで買い物していくものはある?」
と聞くと、花さんの声に混じって、理子さんの声が聞こえた。
あぁ、家族が増えたんだな
そんなことを強く感じた。
「すぐに帰るね」僕はそう言って電話を切ると
いつもより足取り軽く、まっすぐに家に帰った。
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