母は言った。
「この辺の人は呼び鈴鳴らさなくても家に入ってきちゃうじゃない?だから近所の人かなって思って、気にしてなかったんだけど、また振り返ってみたら、そのおばあさんいなくなってたのよね」
母はなんてことないと言った風に話を続けた。
「それからしばらくして、昔のアルバムを見る機会があって、よくよく見てたらあの時のおばあさんが写真に写ってたのよ。この家の亡くなったおばあさんだったのよ」
僕と兄は、幼少の頃から怖い話が大嫌いだった。
その話を聞いて以来、台所も、その隣の仏壇の部屋も怖くなってしまい
暗がりの一階全般が恐ろしくて仕方がなかった。
夏休み、両親も祖父母も不在の日があった。
その日の天気は雨が吹き荒れていて、嵐のようだった。
家には僕と兄の二人だけが2階の一番奥の部屋にいて
教育テレビや、アラレちゃんの再放送を見たりしていた。
そんな時兄が言った。
「なんか下の階から物音が聞こえないか?」
「え??」
誰もいないはずの階下から物音がする。
我々を包む空気は一転した。
当時、エアコンなどをめったに使わなかった我々は汗だくで過ごしていたのだけど
瞬間的に冷や汗が出てきた。
「そんなはずはないよ」
と僕は気のせいであることを主張した。
「いや、絶対聞こえる」
と兄は現実的な主張をした。
実際聞こえていたのだ。物音が。
アラレちゃんの再放送は終わり、いつのまにか『どうなってるの?』の枠の
番組になっていた。
そしてよりによって真夏の怪談スペシャルで稲川淳二がゲストで現れた。
笑いを生み出すはずのテレビから青白い怖そうな映像が垂れ流されていた。
テレビを消せば消したで、階下で起きている問題を直視しなくてはならない。
僕たちは、まじめな顔で武器になり得るものを探して手にとり、
まずは部屋からでることにした。
外では風が勢いを増し、雨が窓を打ち付けていた。
時折雷も聞こえてきて恐怖を助長している。
ようやく階段のところまでたどり着くと、1階がいつもよりも薄暗く見える。
「にいちゃん先行ってよ」
こういうときは都合良く弟面する僕。
兄は恐る恐る一段一段、階段を降りて行く。
僕はその後を追う形だ。
仏壇のある部屋を過ぎ、台所を過ぎ、物音がするほうへ歩みを進める。
すると物音の原因が判明した。
うっすらと開いた窓に傘が当たってバサバサと音を立てていただけであった。
僕たち二人は安堵の表情を浮かべ、ちょうど昼時になったこともあり、
台所で母が作っておいてくれた昼食を食べた。
その時は不思議と台所は怖くなかった。なぜだろう。
母からブログに兄のことも書いてみてよと言われたので、
昔のことを思い出してみたらこんなことがあったので書いてみた。
オチもないけど。
次書く時はもう少しまじめなトーンで書いてみようと思います。
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