2010年6月23日水曜日

亀とウサギと

白々と東の空がグラデーションを描いていく。静かに。

やがてそれは、一筋の光の線を作って部屋の片隅を照らし出した。
僕は、自分がどこにいるのか皆目検討がつかない状態だったが、その光によって得られる情報を頭のなかに入れていった。その部屋の床はコンクリートが敷かれ、大きなガラス窓によって外の世界と遮断されていた。壁際には白い布の固まりのようなものが置いてあった。ドアらしきものはあるが内側から開けられるようなしくみにはなっていないようだった。
光の筋は、時間とともに拡大していって、ついには部屋全体を光の洪水で包んでいった。そして僕はその光に目を慣らしていくのと同時に、部屋の異変に気づき始めていた。
「自分以外の生物が、この空間のなかにいる」
僕の体のセンサーが全力で警戒信号を鳴らした。「ここにいては危ない、なにかが起こってしまう」と。
しかし僕はなにが起こるか知りたかった。この目で確認したかった。
僕の目の端の方で白い固まりが微かに動いた。僕はその方向に体を向けると深呼吸をした。「なにが起きても動じない」僕は心の中でつぶやいた。目をそらさずに見続けた。
やがて白い固まりは、そのすべてを僕の前にさらけ出した。長い耳に短い足。赤い目。ウサギだった。
ふと窓の方に目をやるとウサギの他に、緑色の物体の姿を認めた。亀だった。それは僕だ。

神様はあのときの決着をつけさせようとしているらしい。
やれやれ
僕はただでさえ歩くのが遅いのに、さらに重い足取りでウサギの元へと向かった。


続く。

2010年6月7日月曜日

140文字の弊害のため文章が下手になった

目を覚ますと、ベッドには人の重みが作ったしわが波打っていた。僕はそれを手のひらで撫で、しわをのばした。アイフォンでツイッターを確認すると文字通りベッドから這い出た。

ばんやりとした記憶の中で、確かhanaは「行ってきます」と言った。僕は「いってらっしゃい」と寝ぼけ眼で言ったかもしれない。言ってないかもしれない。

テーブルの上には、駒沢公園の近くにあるパン屋で、hanaが買ってきたというクロワッサンがあった。僕は珈琲を煎れてからそれを食べた。
目を覚ました時に、(しかも日曜日)テレビでお宝鑑定団を見るというのも、休日を食いつぶすようでなんだか虚しさがあった。しばらくしてから軽い掃除をし、洗濯物を畳みシャワーを浴びた。昨日髪を切ったのだけど、その時に切った髪の毛の残骸が排水溝に流れて行った。

シャワーを浴び終えてしばらくすると、出先からhanaが帰って来た。「お腹がぺこぺこだ」と言ってパスタと簡単なサラダを作って食べ始めた。僕はそれを眺めながら、仕事に行きたくないなと思った。このまま静かな日だまりのなかで、hanaがパスタを口にふくんで口をもぐもぐと動かす姿を見ていたいなと思った。

ベランダで煙草を吸いながら、会社に行きたくないなと思い。
トイレに行って、会社に行きたくないなと思い。
もう一度、ベランダで一服しても、やっぱり会社に行きたくないなと思った。
予定より30分ほど遅れて家を出た。

家を出たくないと、後ろ髪を引かれ続けながら246を自転車で走った。
伸びすぎた髪の毛が車輪にからまり、僕は空まで飛んで壊れて消えた。

しゃぼんだま。

シャットアウト。

パチン。

ザッツオール。