その日、日本列島上空において、未確認飛行物体が確認された。
北は北海道、南は沖縄まで実に様々な地域でその存在を誇示するかのように
物体はゆっくりと飛行していた。
それはOLがカーディガンを肩にかけ、財布を小脇に抱えて
「今日何にする?」と対して仲もよくない同僚と昼食の話をする時刻のことであった。
サングラスをかけた唯一無二の司会者の番組は中止になり
その飛行物体を特集した特別番組が急遽放送された。
こういった時にしか需要がないどこそこ大学の教授は
とっておきのスーツに身を包み、それでも白衣を羽織って
得意げに、雄弁に語っていた。
「これは非常事態です。謎の飛行物体の目的は計り知ることもできませんが
これははるか昔に予言された未知の生物の襲来です、つまり人類の滅亡を表します。
逃げも隠れもできない。神に祈ってももはや仕方の無い事なのです。」
なんの解決にもならないことをどこそこの教授は言った。
全く場違いなのにも関わらず急遽招集されたコメンテーターは
それに対して、ギャランティに見合う分だけの返答をした。
「まだそうとは言い切れませんよ。謎の飛行物体がこちらになんのアクションも起こしていない、
なにか要求があるのか、この星を破壊しにきたのか。不確定要素の多い中で不安をあおるのは
いかがなものでしょうか」
中身がなく、ただの焼き直し的内容の情報が伝えられて行く。
過去にあった未確認飛行物体の映像から、ネッシーまで。
そしてこの非常事態に総理大臣は沖縄でゴルフをしているとまで伝えた。
こんな時でさえ、報道は総理大臣の支持率を下げる事しか考えられないらしい。
非常事態だと言うのに。
☆☆☆
「ったく、やってらんないよ」
銀河系の中でも1.2を争うほど汚染された地球を掃除する事を言い渡されたタコ星人は言った。
「いちいちそういうことを言うな。言葉にすると余計に嫌になる」
タコ星人とともに、宿題を3日連続で忘れた罰として地球を掃除する事を言い渡されたイカ星人は言った。
「でもさ、よりによって地球だぜ? この前掃除したのは
たったの6500万年前のことなのになんでもうこんなに汚いんだよ?」
タコ星人は吸盤で器用にハンドルを握り運転をしながら言った。
「下等な生物は、極限まで自分を追い込まないと自分の状況を判断できないんだ。
これは仕方の無い事なんだよ。その存在を認めないと話は進まないんだ」
イカ星人はうんざりした口調で言った。
「へっ、そんなに偉そうに言うけど、お前だって宿題忘れたんだろ?」
タコ星人は少しむっとした口調で言った。
「君と一緒にするなよ、僕の場合はそれを宿題としてやる意味が理解できなかったからだ。
分かりきっている事を、宿題として教師に提出しなくてはならないのは僕にとって実に摩耗する作業なんだ」
こんなやりとりがずっと続いている。
タコ星人は、ふれくされたように横を向き、特に汚染された日本を見て言った。
「こいつらなんでこんな中で暮らす事が出来るんだ? 俺には理解できないよ」
イカ星人はその発言を無視して「さっさと始めよう。こんな所にいるとこっちの気分まで悪くなりそうだ」と言って
掃除に取りかかるための準備をした。
続く
(オリジナルはたしか星しんいちあたりがかいているきがします)