2018年4月30日月曜日

2018年4月16日月曜日

デート

土曜日だけど、花さんは仕事に出かけた。それは新宿の某ファッションビルで行われるポップアップショップに立ち会うというものだった。

僕と理子は予定のない休日の世界にいた。
僕は五木田智央氏の展示のチケットを職場でもらっていたので、見に行くことにした。偶然ではあるがそれも新宿の近くの初台だった。
僕の住んでいる街から初台に行くにはどうしたらいいのか、グーグルで調べてみると、渋谷でバスに乗り換えることを提示された。
僕は理子に、「電車とバスに乗ってお出かけしよう。いまなら理子の好きなお菓子もあるよ」と母親と離れた寂しさの渦中にいる理子をデートに誘った。
すると「好きなお菓子ってなあに?」と聞いてきた。
「こ」「あ」「ら」「の」と1字ずつ言うと「マーチ!」と理子は元気よく答えた。

そうして僕らは家を出た。理子は少し大きめのミニーちゃんのぬいぐるみを持っていた。

理子はプリキュアに変身する過程を叫びながら歩いた。道行く人はくすくすと笑っていた。
電車に乗って渋谷まで行く。土曜の午前だとしても、渋谷駅はどこかへ急ぐ人たちであふれていて、子供をつれた足並みでは歩調は合わなかった。
理子を抱っこして足早にバスターミナルに向かう。グーグルで示された乗るべきバスはすぐに見つかった。乗り込むとすぐにバスは発車した。
バスは渋谷の交差点を越え、元パルコのあった道を抜けていく。工事中の白い塀には大友克洋の絵が描かれていた。
井の頭通りを山手通り方向に曲がり、しばらく登ると、初台へと近づいていく。
「パパはこの辺に住んでいたことがあるんだよ」というと、「へー」と理子は気のない返事をするだけだった。

東京オペラシティ南という停留所で降りたのだけど、一瞬自分がどこにいるか分からなくなった。なぜならそこはオペラシティという名前をつける停留所にしてはそれからずいぶんと離れたところだったからだった。
自分が住んでいたと言った割にはそこのことを把握していないのも情けない話ではある。

甲州街道を渡り、オペラシティへと向かう。ビル風が強く吹く中を理子は駆け抜けていく。
建物に入り、エスカレーターで3階にあがるとギャラリーに到着する。
手荷物をロッカーに預け、入り口の係員にチケットを渡して中に入った。
「お手を離さないようにお願いします」と控えめにその人は言った。

五木田さんの作品は決して子供受けをするものではない。むしろ泣くかもしれないと思っていたのだけど、「なんでお顔ないんだろう」という素朴な疑問を持つだけで、特に泣くことも叫ぶこともなかった。
開場したばかりだったからか、客はほぼいなかったのもよかった。

作品はどれも巨大で、ある程度距離を保ってみることができた。理子は始めは手をつないで歩いていたけれど、そのうち抱っこをした。
巨大な絵に邪魔されることなく対峙できたので、スムーズに回ることができた。
理子は会場の空気を感じたのか、話す声は内緒話をするようなボリュームで、勘のいい子だなと思った。
30分にも満たない鑑賞時間ではあったけれど、充実したものだった。会場を出たところにある書店で鈴木理策さんのポスターがあった。木を撮したものと海を撮したものとあり、理子に選ばせたところ、木の方を選んだのでそちらを買った。

広場にでると、燕尾服を着た初老の男性がどこか遠くを見つめていた。しばらく歩くと遠くには花嫁と花婿の姿があり、写真撮影を行っていた。理子に「近くまで行ってみる?」と聞くと行きたいというので行ってみることにしたけれど、いざ近くまで行くと尻込みをしてきた道を戻ってしまった。

そんなことをしているとお昼ご飯の時間となり、マクドナルドに行くことにした。
僕はそれをもちろんグーグルで調べた。初台に住んでいたのにもかかわらずだ。

マクドナルドで理子はハッピーセットを頼み、おまけを貰うとそれはハローキティのメガネだった。
テラス席に座ると、まず理子はポテトを食べた。ポテトを食べ、そのついでにバーガーを食べると言ったふうだった。
食事を済ませると、理子になにかしたいことはあるのかと聞いてみると「ママはどこにいるの?」と言った。
近くにいるといえばいる、と僕が答えると「行きたい」と当然のように理子は答えるので、新宿へと向かうことにした。
甲州街道を手をつなぎながら歩くのだけど、車がうるさくて理子の声が聞き取れなかった。そういったわけで途中から抱っこをした。
すると理子は、少し前から僕の首元にでき始めた吹き出物の突起部分をいじり始める。
理子はちょっとしたボツボツを見つける天才のようである。

そのうち文化服装学院が見えた。
「パパはあそこの学校に通っていたんだよ」と理子に話しかける。
文化の隣には公園があったのでそこに行ってみることにした。まさか自分が子供を連れてここにくるなんてな、と思った。卒業してから10年以上も経っていた。
文化の校舎の脇道にあった通称「お弁当通り」にあった総菜屋はもう存在していなかった。

滑り台でひとしきり遊ぶと、いい加減ママに会いたいというので、南口駅まで急ぐ。
僕が通学で歩いていた時とは違う店が並ぶ道を進んで行く。
某ショッピングビルに到着し、花さんのいる店を目指した。
いざ店に着くと、花さんは仕事中なわけで、忙しそうだった。
一言二言話しをしてその場を去った。

ビルの外に出ると理子は「家に帰ってママを待ちたい」というので、帰ることにした。
新宿から山手線で渋谷に行くよりも、新宿三丁目から地下鉄で行った方が気分的には楽だったので、そのようにした。
電車に乗り換えるまではスムーズだったけれど、駒沢あたりで僕に抱っこされたまま理子は眠りについた。
そうして二人のデートは終了した。

2018年4月13日金曜日

ぶどう味のアイス。

理子にとって毎週金曜日はアイスの日なわけだけど、今日もその充実たる1日であった。
お迎えに行き、園を出る頃には、アイスの自販機にまっしぐらである。
金曜日はシーツやら上履きやらを持ち帰るために荷物が多いわけだけど、それを抱え、走り出そうとする理子をおさえつけるように抱っこをし、自販機へと向かう。
そこの前に立つと、お金ちょうだい!お金ちょうだい!と理子が言うので、130円を渡すと、器用に投入口にイン。目当てのぶどう味のアイスを無事にゲットした。

3歳とは立派なものである。

2018年4月8日日曜日

洗濯物

ふと、洗濯物を干していると、理子の服が明らかに大きくなったことに気がついた。
今までは、ピンチのついた洗濯ハンガーの幅に対して、理子のズボンは小さく、引っ張られる形になってしまっていた。それが今では大人のそれのごとく、特にピンチに引っ張られることなく素直に垂れ下がっている。

顔を向き合わせていると、その体の成長よりは表情と対峙してしまうので体の大きさを気にすることはないのだけど、ふと後ろ姿を見る時は、その背丈の成長に感嘆を覚える。
なんだか立派に成長したな、と思う。

昨日こうだったけど、今日はこうなんだ、ということを言えるようになった時は、「大人にとっては当たり前の感覚を、この子も持ち始めたのだな」と思った。

美容室のNIKKIに行ったら、最初の頃はヨシグチさんに近づくことはなかったけど、昨日に関しては自分から、トーマスランドに行ったことを楽しそうに話していた。
僕が、「明日は髪を切りに行くよ」というと「ニッキに行くの?」とも言っていた。

いろんなことが繋がり始めて、記憶をとどめたり、それをまた拾い起こして話をすることができるようになった。


しかし、あれだ。理子の「好きな男の子・ゆうき君」が登場して、僕の心は昨日より少しざわついている。