いつだったか、理子が夏休みに入ったら、僕の実家に長期滞在ことが決まった。去年も実行されたのだけど、運悪く滞在3−4日目で発熱してしまった。そういうコロナの時季だったのだ。
この時は最寄りの駅まで迎えに行って、そのまま連れて帰った。どこにも寄らず、door to station。言葉も少なかった。
今季はコロナも空けて、体調も万全である。
前々日には自分専用のカートに荷物と期待を詰め込んでいた。
前日には、翌日着ていく服を広げて用意していた。満を辞してというのはこういうことかと体現しているかのようだった。きちんとハンカチを入れているのも偉いなと思った。
土曜日、僕は美容室に行き、11時頃になって理子とでかけた。
電車に乗っていてもとくにYouTubeを見たがったりせずに過ごせるようになっていて
成長を感じる。
あざみ野で乗り換えて、新横浜へと向かう。駅のホームの売店で、理子はヒレカツサンドを選び、私はビールとおにぎりを買った。早々にホームに滑り込んできた新幹線に乗りこんだ。
車列の端のほうの車両に乗ったからか、乗客はまばらで座ることができた。
早速買ってきたものを食べようとすると、辛子が効いていて、僕のおにぎりと交換することになった。
新横浜から三島はあっという間の距離だった。
降りる直前、車窓の向うに広がる青空と理子の後ろ姿が、妙に眩しくて、何度もカメラのシャッターを切った。これから2週間におよぶワクワクの連続に胸を躍らせている様子が、背中から伝わってくるかのようだった。
在来線へと乗り継ぎ、駅につくとそこにはすでに兄が迎えに来てくれていて、近づくとドアが開いた。
そこにはこととみーが満面の笑みを浮かべて歓迎しれくれていた。
それに理子も笑顔で答えていた。
自分が子供の頃に過ごした夏休みの2週間ってどんな日々だったのか。
理子のように真っ黒に日焼けした肌と、白い歯をめいっぱい見せた笑顔で、日々を楽しんでいたのかしら。
家に到着するとそこには水が張られた大きなプールがあった。
水面がキラキラと輝いていた。それはまるで理子の目のようだ。
もう楽しいに決まってるじゃん。
長くて短くて楽しい時間が始まった。