たいていそうなのだけれど、
朝、目をさますとき、僕が眠る布団の隣のベッドには
既に人が抜け出ていった跡が残っている。
そう、僕はいつも少し寝坊気味である。
それでもなかなか布団から抜け出せないでいる僕は30分程さらに寝坊を続ける。
そうこうしていると、階下から理子さんの、鳴き声とも叫び声ともつかない声が聞こえてくる。
僕は寒さもなんのその、都合良く布団から飛び出して階段を駆け下りる。
リビングの扉を開けるとそこには理子さんとじゃれあう花さんの姿がある。
部屋には少しだけコーヒーの香りが残っている。
花さんが飲んだであろうノンカフェインコーヒーだろう。
僕は花さんから理子さんを奪い取り、顔と顔をくっつけて
「おはよう、理子さん」ととても甘い声で話しかける。
僕の母がこの姿を見たらなんて言うだろう?
花さんがとっくに済ませた朝食の後を追うように、
僕もコーヒーを入れる。
そして花さんがパン屋で買ってきてくれた食パンに、バターの固まりを乗せて
オーブントースターでこんがりと焼く。
「今日、こんな夢を見たんだよ」という話をしたり、
「理子さんはもううんち出したんだよ、偉いね」という話をしたりする。
僕にとって朝の時間はとても貴重だ。
理子さんと遊ぶことのできる限られた時間なのだ。
どうやら僕のことをきちんと父親と認識してくれているらしく
パパ見知りという現象には陥らないでいてくれている。
理子さんは朝の7時頃には目を覚まし、
10時頃には昼寝をする。
我が子の寝顔はとてもかわいいのだけど、
起きてお父さんと遊んでくれないかしら?
そうは思っても、もちろん起こしたりはしない。
不可抗力によって起きてしまった時は、甘んじて受け入れよう。
わざと大きな音をたてた訳じゃないんだから。
だからそんなに悲しい顔をしないでいいんだよ。