抱っこをしていないと全身を使って泣き叫ぶ理子さん。
花さんが席を外していて、僕が理子さんを抱っこする。
最初は全く泣き止む気配を見せない。
僕は休日しか理子さんの世話をすることができないから、
普段の抱き心地と違って感じるのであろう。
しかしながら、しばらく声をかけながらゆらゆらと抱っこし続けていると
しだいに理子さんの体の力が抜けていくのが分かる。
そして、まばたきがだんだんとゆっくりとなって、
ついにはそのまぶたを完全に閉じた。
しかしすぐにベッドに置いたりはしない。
赤ちゃん共通に存在するという背中スイッチが発動してしまうのだ。
僕はゆらゆらとし続ける。
即興で作る歌をうたいながら理子さんの背中をとんとん叩いて
もっと深い眠りへと誘う。
固く握られていた手はほどかれ、手のひらを開いていた。
完全に僕の腕の中で眠りについた証拠である。
僕は小さくガッツボーズをする。
心の中で大きく喜ぶ。
ただただ純粋に嬉しい。
こういった積み重ねが親子の絆を深めていくんだと思う。
今日は久々の休みで、僕が理子さんをお風呂に入れた。
生まれたばかりとは違って、体が安定し始めているので幾分楽になってきた。
湯船に一緒に入って、膝の上に乗せて向き合う。
お湯の中で浮かぶ理子さんは、少し不思議そうな顔をして僕を見ている。
そして、ふいに笑う。何度も笑顔になる。
僕はたまらない気持ちになって笑顔を返す。
理子さんが生まれてから、嬉しい、と思う回数が増えた。
明日もきっと、そう思う。