2013年12月15日日曜日

YAMANASHI



いつの頃だったか、酒を飲んでる席で、
「キャンプしたいね」などという話がなされた。
みんなが一様に「いいねえ」「やろう、やろう」などと言っていたが
その時は酒を飲んでいるということもあったのか、話が具体的になることはなく、
食い散らかした肴の皿が店員に運ばれるように、その話はどこかにいってしまった。

それから幾ばくかの月日が流れた。
また飲んでる席で、同じような話がなされた。
前回と違うのは話が具体的になったということだった。
田代氏が以前利用していい施設だったという山梨にある「べるが」という場所を借りることになったのだった。
それぞれに役割分担が与えられ、
田代氏は幹事、横山氏は運転、貝塚氏は料理、中山氏、花松氏はレクリエーション、
スチュアートと僕は記録係となった。
矢野氏は仕事の都合が不明だったので、行けるようなら行くというところで落ち着いた。


11月24日、晴れ。
8時半に新宿駅西口に我々は集合した。
基本的に朝会うということが皆無であった我々にとってはかなりレアケースである。
レンタカーを手配している横山氏が到着するまで、
新宿のビル群の谷間でタバコをふかしながら、この時季にしては暖かい太陽の日差しを浴びていた。

しばらくしてワゴン車が到着。荷物を詰め込むと、近くにいたバスの運転手に写真を撮ってもらった。
出発前の『気合い』である。

中央道に乗って山梨までひた走る予定だったのだけど、
道の渋滞はかなりのものであった。
それでもみんなといると、大して苦になることもなく、
「いい具合にくたびれた小屋がありますぜ」と朽ちかけの建物に興奮したり、
「それは君、あれだよねぇ」と大泉洋が現れたりしていた。

途中、コンビニに寄って飲み物や食べ物を調達すると、ロングライドが始まった。
横山セレクトCDがミニマムに車体を揺らす。
車窓を流れて行く景色は、近代的な建物から次第に自然あふれるものに変わっていき、
やがて紅葉の色が美しい山並みになった。


山梨県に入ると空の色と紅葉が一段と美しくなった。
車は順調に目的地へと進んでいった。
前衛的且つ都会的な音楽が車内では流れており、車窓とのギャップがあった。

べるがの借りた部屋で調理ができるということもあり、
スーパーで食材を調達する事にした。
その土地に根付いた庶民的なスーパーマーケット。
東京に比べてあれが安い、これが安いなどと話しながら買い物かごを埋めていった。
料理係の貝塚氏に確認し、必要な物を買いそろえると再び車に乗り込んだ。

長い一本道をしばらく進むと、そこには森に囲まれた、べるががあった。
到着時間が押していた事もあり、田代氏は颯爽と車を降りると、チェックインを済ませ、
施設の見取り図を手に、部屋まで向かった。

借りたコテージは、入った瞬間、外よりも寒く感じた。
しかしながらかなりグレードのよいものだった。
清潔感があり、奇麗にベッドメイキングされた寝室があり、なによりも森のなかにある雰囲気は抜群だった。
すぐさまガスストーブに火をつけると、手早く荷物を然るべき場所へと移動した。

イベントとして、たき火をしたいと僕は提案していて、田代氏はそれを手配してくれていた。
受付でさつまいもを人数分確保し、スーパーで買ったしいたけとともに、新聞、アルミホイルにくるんだ。
たき火ができるスペースに移動すると、係のおばさんから手ほどきを受けた。
「天気がいい日が続いたから、枯れ葉も乾いていてすぐに火がつくよ」と彼女は言った。
教えられた通りに枯れ葉を集め、火をつけるとすぐに煙が立ち上った。
自然に各々が役割を担い、円滑に作業は進められた。
誰かがここで酒を飲みたいと、割と自然の摂理にでも乗っ取ったかのようなことを言って、
買ってきたワインが用意された。
グラスに注ぐ事なく、それはラッパ飲みでみんなに回された。
控えめに言っても、それはすごくおいしかった。
火を見ると人は何故か落ち着くらしかった。
森に落ちる木漏れ日。立ち上る乾いた煙。
時間が経つのも忘れて僕たちはその空間にとけ込んでいった。
果たして焼き上がったさつまいもはおいしく、
しいたけも調味料がなくとも素材のうまみが引き立つものだった。

火の始末は係の人にお任せをして、部屋に戻る。
ガスストーブのおかげで部屋は暖まっていた。
缶ビールで乾杯すると、ゆるゆると宴がスタートした。
長くなりそうな夜だった。

続く

one day,trip, with friend

TC-1とTVS3。
日付カウンターが入っているのが後者。
割とカリカリと撮れてる気がします。