人生において一度しかないこと。
そもそも人生というものが一度きりのものなのだから、
それは自分の全てにおいて、一度ということだ。一般的には。
それは去年の12月23日にひっそりと行われた。
平静を装いながらも、内なる鼓動は、周りに伝えるかのごとく高なっていた。
僕はプロポーズをした。人生に一度の。
体一つではその重圧に押し殺されそうになるから、片手にはバラの花束を持った。
少しの重みは、気持ちを落ち着かせる。
月が奇麗な夜だった。
何も知らない彼女をとある場所に呼び出して自分の気持ちを伝えた。
彼女の心にこの想いは伝わり、バラが彼女の手に渡された。
二人は夫婦になるのだ。
恋人から、呼び名が変わる。
観客のいない人生の大舞台でエンドロール。
月は高みの見物。
それでも煌煌と光を反射させ、僕たちの進む道を照らしてくれていた。